貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

社内レビューは、営業推進部と制作チーム合同で行われた。

本提案前の最終確認。
参加者はいつもより多い。
部長もいる。
私の内臓は、相変わらず非常ベルを鳴らしていた。

モニターに表紙が映る。

『三分だけ、あなたの味方になる。』

私は前に立った。

「今回のコピー展開は、時間帯ごとの機能差ではなく、お客様とリュミエールの距離が少しずつ縮まる流れとして作っています」

声は震えていない。

たぶん。

「朝は、迷わず入れることで背中を押す。昼は、席や一言で居場所を見せる。夜は、帰る前に力を抜ける余韻を残す。短い時間でも、その人の気持ちの味方になることを、導線とコピーの両方で伝えます」

真鍋が、すぐにラフを切り替えた。

「この考え方に合わせて、店頭サインも情報を増やすのではなく、不安が出る場所に一言だけ置く設計にしています」

大崎が、進行表をめくりながら補足した。

「プレゼン冒頭では藤代さんの感情導線、そのあと瀬名くんの現場根拠、真鍋さんのラフに接続します。流れはこの順番が一番伝わります」

支えられている。

そう思った。

私の言葉がひとりで宙に浮かないように、真鍋が形を出し、大崎が順番を整え、瀬名が現場の写真を置いてくれる。

私は、守られるだけではない。
でも、ひとりで立っているわけでもない。