貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

「藤代、このコピー展開、真鍋に先に渡しておいて」

榊課長の声は、いつも通り低い。

「はい」

「瀬名、現場根拠の追加は十六時まで」

「承知しました」

「確認は俺がまとめて見る」

私はパソコンの画面を見つめた。
リュミエール本提案に向けた資料は、確実に前へ進んでいる。

『三分だけ、あなたの味方になる。』

その言葉を軸に、朝、昼、夜のコピー展開を作る。
真鍋のラフは洗練されていて、瀬名の現場写真は説得力がある。
大崎は進行表を握りしめ、全員の首根っこを物理的ではなく精神的に掴んでいた。

チームは動いている。

なのに私は、たったひとりだけ、動きが少し鈍かった。