貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

「俺、先輩のことが好きです」

世界が、一瞬だけ静かになった。

車の音も。

遠くの駅のアナウンスも。

公園の木の葉の音も。

全部、遠くなった。

「先輩、俺、本気です」

心臓が、強く鳴った。

私は口を開いた。

でも、何も出てこなかった。

瀬名の言葉は、軽くなかった。

からかいでも、勢いでも、秘密を共有した高揚でもない。

彼は、ずっと私を見ていた。

私が自分で価値だと思っていなかったところまで、ちゃんと。