貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

大崎がにやにやしている。

真鍋は黙ってケーキを選んでいる。

榊課長はホットコーヒーを持ち上げた。

そして、一口飲む前に止まった。

見てしまった。

警戒している。

熱さに。

私は口元を押さえた。

「藤代」

「はい」

「笑うな」

「今日はもう笑っています」

「開き直るな」

大崎が声を上げて笑った。

瀬名も笑った。

真鍋は、淡々とケーキを食べながら言った。

「榊課長、猫舌なんですか」

会話が凍った。

榊課長は無表情だった。

しかし、紙カップを持つ手が一ミリ動いた気がした。

「……そうだ」

認めた。

認めた。

鬼課長が猫舌を公式発表した。

これは社内報に載せるべきではない。

いや、載せてはいけない。

情報の破壊力が高すぎる。

私は笑いをこらえるためにアイスラテを飲んだ。

冷たい。

文明は今日も私を救ってくれる。