貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

私がアイスラテを頼むと、榊課長はホットコーヒーと、キャラメルナッツケーキを選んだ。

まただ。

鬼課長、甘党の継続確認。

瀬名が目を丸くした。

「課長、本当に甘いもの好きなんですね」

「悪いか」

「いえ。だいぶギャップあります」

「よく言われる」

「誰にですか」

榊課長の視線が、私に一瞬だけ落ちた。

やめてください。

ここで私を証人席に立たせないでください。

「藤代」

「はい」

「何か言いたそうだな」

「甘いものは、甘い方がいいんですよね」

言ってから、しまったと思った。

瀬名が、私と榊課長を交互に見た。

「へえ」

出た。

観察した人の「へえ」。

やめて。

観察役は私の専売特許だったはずなのに、最近は周囲が全員観察者になっている。