貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

給湯室の前を通った時、少しだけ耳に声が入った。

「藤代さん、ほんとに企画で評価されたんだ」

「リュミエールのレビュー、藤代さんが説明したらしいよ」

「へえ。じゃあ課長に気に入られてるだけじゃないんだ」

足が止まりかけた。

以前なら、その最後の一言に傷ついたと思う。

今も、まったく痛くないわけではない。

でも、続いた言葉に、私は少しだけ救われた。

「真鍋さんが褒めてたなら本物じゃない?」

「真鍋さん、社交辞令言わないもんね」

その評価基準は非常に正しい。

私は心の中で真鍋に手を合わせた。

ありがとうございます。

あなたの無愛想さが、私の信頼性を保証しています。

噂が消えたわけではない。

でも、少しずつ色が変わっている。

「課長と瀬名くんと近い」だけだった話に、「仕事で評価された」が混ざっていく。

私が前に出したものが、私を守る材料にもなる。

そう思うと、胸の奥が少しだけ強くなった。