貴腐人の憂鬱――鬼上司と犬系後輩に、秘密を握られました――

その時、榊課長のパソコンに通知が入った。

全員の空気が変わる。

差出人は、三枝。

榊課長がメールを開く。

私は息を止めた。

『確認しました。久保田も、この方向なら次回レビューに進められるとのことです。特に「三分だけ、あなたの味方になる」という軸は、ブランドとして検討価値が高いと思います。明日、詳細を拝見させてください』

読んだ瞬間、会議室の空気がほどけた。

「通った……?」

私が小さく言うと、大崎が笑った。

「危機、いったん越えたね」

真鍋が、静かに頷いた。

「この方向なら、絵にできます」

瀬名が、私を見る。

「先輩」

「はい」

「言わなかったこと、言ってよかったでしょ」

私は、少しだけ笑った。

「……はい」

認めると、胸が温かくなった。

好きなものを使った。

隠してきた熱を、仕事の言葉に直した。

笑われなかった。

それどころか、企画の軸になった。

まだ怖い。
怖さは消えない。

でも、弱みだけではなかった。

私の好きは、私の目を作っていた。