描いているのは、漫画のネームだ。
公開はしていない。投稿もしていない。誰かに見せる予定もない。
ただ、自分の中に湧いてくる関係性を、コマに置いているだけ。
ページには、クールな上司風の男と、人懐っこい後輩風の男が並んでいた。
念のため言っておく。
これは現実の誰かそのものではない。
実在の人物をそのまま描いているわけではない。
ただ、クールな上司と犬系後輩という組み合わせには、古来より人類を動かす何かがある。たぶん重力に近い。
私は画面に向かって、小さく息を吐いた。
「ここは……上司が突き放すんじゃなくて、あえて仕事の言葉で守る……」
口に出してから、慌てて周囲を見る。
誰も聞いていない。
しらたまが薄目を開けただけだ。
「違うの、しらたま。これは創作論だから」
猫に言い訳してどうする。
私は気を取り直して、コマの中に台詞を書き込む。
『お前を甘やかすためじゃない。隣に立たせるために、厳しくしてる』
書いた瞬間、自分で少し照れた。
うわ。
強い。
強めの上司。
でも嫌いじゃない。むしろ、信頼が前提にある厳しさはとてもよい。
ただの圧ではなく、相手を一人前として扱っている感じ。
そこに後輩が「じゃあ、俺が隣に立てるようになったら、あなたは俺を見てくれますか」と返す。
見てくれますか。
敬語。
敬語の中の熱。
ありがとうございます、世界。
私は完全に集中していた。
公園のざわめきも、遠くの車の音も、会社で積み上がる未読メールも、全部遠のいていた。
画面の中の二人だけが、私の前にいた。
この時間だけは、誰にも見られない。
誰にも笑われない。
好きなものを、好きなままでいられる。
私の聖域。
そのはずだった。
公開はしていない。投稿もしていない。誰かに見せる予定もない。
ただ、自分の中に湧いてくる関係性を、コマに置いているだけ。
ページには、クールな上司風の男と、人懐っこい後輩風の男が並んでいた。
念のため言っておく。
これは現実の誰かそのものではない。
実在の人物をそのまま描いているわけではない。
ただ、クールな上司と犬系後輩という組み合わせには、古来より人類を動かす何かがある。たぶん重力に近い。
私は画面に向かって、小さく息を吐いた。
「ここは……上司が突き放すんじゃなくて、あえて仕事の言葉で守る……」
口に出してから、慌てて周囲を見る。
誰も聞いていない。
しらたまが薄目を開けただけだ。
「違うの、しらたま。これは創作論だから」
猫に言い訳してどうする。
私は気を取り直して、コマの中に台詞を書き込む。
『お前を甘やかすためじゃない。隣に立たせるために、厳しくしてる』
書いた瞬間、自分で少し照れた。
うわ。
強い。
強めの上司。
でも嫌いじゃない。むしろ、信頼が前提にある厳しさはとてもよい。
ただの圧ではなく、相手を一人前として扱っている感じ。
そこに後輩が「じゃあ、俺が隣に立てるようになったら、あなたは俺を見てくれますか」と返す。
見てくれますか。
敬語。
敬語の中の熱。
ありがとうございます、世界。
私は完全に集中していた。
公園のざわめきも、遠くの車の音も、会社で積み上がる未読メールも、全部遠のいていた。
画面の中の二人だけが、私の前にいた。
この時間だけは、誰にも見られない。
誰にも笑われない。
好きなものを、好きなままでいられる。
私の聖域。
そのはずだった。



