月のない夜









「ーーーーーーはぁっ、はぁっ、はぁっ!!」



街灯の明かりだけが頼りの夜道。


ひたすらに両腕を振って走り続けている俺、秋谷神流(あきやかんな)は、今だ嘗てない恐怖に追い詰められていた。


走れば走るほど、耳障りな音が聞こえて息が詰まりそうだった。余裕なんてこれっぽちもないけど、現状を確認するために走りながらチラッと後ろを見る。


道の奥、闇から抜け出すようにして現れた『ソレ』の姿が確認できたのは一瞬だった。─────バチッ!!ソイツが自分を照らした明かりを否定したからだ。黒色に包まれて再び見えなくなったけど、今も暗闇の中で俺をめがけて追い掛けているだろう。


「…っ!!」


今も狙われている恐怖から逃避するように俺は再び前を向いて速度を上げた。でも今着ている服が制服だから走りにくい。ああ、走りやすい格好だったらよかったのに。ここに来てから初めてそんなことを思いながら、目眩ましに使える曲がり角を利用し続けていた。


そうこうしているうちに俺はソイツを撒けたようで、どれだけ後ろを見ても、俺を困惑させた影は見当たらなかった。あの耳障りな音も嘘みたいにピタリと止んでいる。


「はぁっ、はぁっ、はぁ……逃げ切れた、のか?」