午後、お昼を食べたあと、私はガチャガチャコーナーのレジに入る。
そこには何百と言うガチャガチャが置かれていて、他にゲームの筐体もある。
なので子供や大人が入れ替わりたちかわりゲームの筐体の前に座って、お金を入れていた。
ライダーやカプセルモンスターっていう人気のゲームの筐体、それに女の子のアイドルゲームもある。
アイドルプリンセスっていうシリーズらしく、私はすごく心をときめかせた。
アイドル活動のゲームは知っていたけど、アイドルプリンセスっていうシリーズは知らなかった。
そのアイドルゲームは小さな女の子だけではなく、高校生くらいの女の子や大人の女性の姿も多かった。
今そのゲームをプレイしているのは私と同じくらいと思われる女性だ。
流れる音楽に合わせてボタンを押すらしい。
シャンシャン、というボタンを押す音が聞こえてくる。
そこにけたたましい、ビービーという音と共に近づいてくる鬼頭さんの姿が見えた。
彼は、レジの前に立つと私にその音の原因を差し出しながら言った。
「売場で鳴ってた」
それは、一万円くらいはしそうなフィギュアだった。鳴っていたのは窃盗防止の、黒くて四角い防犯のタグだ。
商品から外れたり、出入り口のゲートに近づくと鳴る仕様になっている。
私は鬼頭さんからそれを受け取り、タグをはずして専用の器具で音を止める。
「ありがとう、それ付け直しておいてくれる?」
「わかりました。あ、鬼頭さん、ちょっと聞きたいことあるんですけど」
言いながら、私はタグを巻きつけるためのラップを、レジの後ろの棚から取り出す。
「なに?」
レジカウンターの向こう側。
鬼頭さんは小さく首を傾げてこちらを見ている。
私はタグを商品に巻きつけながら、以前に聞いたVチューバーの事を尋ねた。
「あの、前に言っていたじゃないですか。プラモデルの配信しているVチューバーがいるって」
「あぁ、セナのこと?」
その名前を聞くと、変な緊張が走る。だって赤月君と同じ名前なんだから。
私はその緊張を誤魔化すように手を動かしつつ答えた。
「そうです、そうです。あのあと動画見たんですけど、本当にプラモを作る様子とか配信してるんですね。びっくりしました」
この間赤月君と出掛けた日に見た、セナ=ジェイドの動画。
おはよう配信がたくさんあって、プラモを作っている様子とか、塗装している動画とかもあった。
ゲームも好きみたいでたまにゲームプレイ動画の配信もしているらしい。
特におはよう配信には力を入れているみたいで、毎日九時から一時間ほどやってるようだ。
――赤月君との共通点、多すぎないかな。それに声がすごく似てる。マイクを通してるし、声を作ってるようにも聞こえるから微妙だけど。
私の言葉を受けて、鬼頭さんは嬉しそうに笑う。
「そうそう、けっこう有名なんだよ。模型雑誌にも寄稿してるらしいよ」
「え、そうなんですか?」
「うん。『ホビーガーデン』っていう雑誌なんだけど」
そう鬼頭さんが教えてくれる。
すごい。けど…
私の中で疑惑が徐々に確信にかわりつつある。
セナ=ジェイドは登録者二十万人。赤月君も二十万人と言っていた。
それにプラモデルと毎日のおはよう配信。雑誌への寄稿。そこまで共通する人間、そうはいないだろう。
でも、この間はぐらかされたことを思うと、聞いたところで教えてくれそうにないように思う。
気になるけど……そこまで踏み込んでいいのかと思うと足踏みしてしまう。
そもそもVチューバーが、これ、自分です、なんて周りに言うだろうか。
顔出しをしているわけではないし、言わなければ絶対にわからない。
だからわざわざ名乗ることもしないと思う。
十一月十日月曜日に、私は赤月君と会う約束を取り付けていた。
もう少し私と赤月君の距離が縮んだら、何か教えてくれるかな。
私は鬼頭さんに小さく頭を下げて、防犯のタグを巻きなおした商品を差し出す。
「セナってすごいんですね」
「うん、グッズも出してるし、ボイスも販売してるんだよ。さすがに俺はそこまでは興味ないけど。動画が好きなだけだし」
グッズ。ボイス販売。まるでアイドルだ。Vチューバーってそんなことまでしてるんだ。
後でもう少し調べてみようかな。
そうひとり決意を固めて、私は鬼頭さんの背中を見送った。
そこには何百と言うガチャガチャが置かれていて、他にゲームの筐体もある。
なので子供や大人が入れ替わりたちかわりゲームの筐体の前に座って、お金を入れていた。
ライダーやカプセルモンスターっていう人気のゲームの筐体、それに女の子のアイドルゲームもある。
アイドルプリンセスっていうシリーズらしく、私はすごく心をときめかせた。
アイドル活動のゲームは知っていたけど、アイドルプリンセスっていうシリーズは知らなかった。
そのアイドルゲームは小さな女の子だけではなく、高校生くらいの女の子や大人の女性の姿も多かった。
今そのゲームをプレイしているのは私と同じくらいと思われる女性だ。
流れる音楽に合わせてボタンを押すらしい。
シャンシャン、というボタンを押す音が聞こえてくる。
そこにけたたましい、ビービーという音と共に近づいてくる鬼頭さんの姿が見えた。
彼は、レジの前に立つと私にその音の原因を差し出しながら言った。
「売場で鳴ってた」
それは、一万円くらいはしそうなフィギュアだった。鳴っていたのは窃盗防止の、黒くて四角い防犯のタグだ。
商品から外れたり、出入り口のゲートに近づくと鳴る仕様になっている。
私は鬼頭さんからそれを受け取り、タグをはずして専用の器具で音を止める。
「ありがとう、それ付け直しておいてくれる?」
「わかりました。あ、鬼頭さん、ちょっと聞きたいことあるんですけど」
言いながら、私はタグを巻きつけるためのラップを、レジの後ろの棚から取り出す。
「なに?」
レジカウンターの向こう側。
鬼頭さんは小さく首を傾げてこちらを見ている。
私はタグを商品に巻きつけながら、以前に聞いたVチューバーの事を尋ねた。
「あの、前に言っていたじゃないですか。プラモデルの配信しているVチューバーがいるって」
「あぁ、セナのこと?」
その名前を聞くと、変な緊張が走る。だって赤月君と同じ名前なんだから。
私はその緊張を誤魔化すように手を動かしつつ答えた。
「そうです、そうです。あのあと動画見たんですけど、本当にプラモを作る様子とか配信してるんですね。びっくりしました」
この間赤月君と出掛けた日に見た、セナ=ジェイドの動画。
おはよう配信がたくさんあって、プラモを作っている様子とか、塗装している動画とかもあった。
ゲームも好きみたいでたまにゲームプレイ動画の配信もしているらしい。
特におはよう配信には力を入れているみたいで、毎日九時から一時間ほどやってるようだ。
――赤月君との共通点、多すぎないかな。それに声がすごく似てる。マイクを通してるし、声を作ってるようにも聞こえるから微妙だけど。
私の言葉を受けて、鬼頭さんは嬉しそうに笑う。
「そうそう、けっこう有名なんだよ。模型雑誌にも寄稿してるらしいよ」
「え、そうなんですか?」
「うん。『ホビーガーデン』っていう雑誌なんだけど」
そう鬼頭さんが教えてくれる。
すごい。けど…
私の中で疑惑が徐々に確信にかわりつつある。
セナ=ジェイドは登録者二十万人。赤月君も二十万人と言っていた。
それにプラモデルと毎日のおはよう配信。雑誌への寄稿。そこまで共通する人間、そうはいないだろう。
でも、この間はぐらかされたことを思うと、聞いたところで教えてくれそうにないように思う。
気になるけど……そこまで踏み込んでいいのかと思うと足踏みしてしまう。
そもそもVチューバーが、これ、自分です、なんて周りに言うだろうか。
顔出しをしているわけではないし、言わなければ絶対にわからない。
だからわざわざ名乗ることもしないと思う。
十一月十日月曜日に、私は赤月君と会う約束を取り付けていた。
もう少し私と赤月君の距離が縮んだら、何か教えてくれるかな。
私は鬼頭さんに小さく頭を下げて、防犯のタグを巻きなおした商品を差し出す。
「セナってすごいんですね」
「うん、グッズも出してるし、ボイスも販売してるんだよ。さすがに俺はそこまでは興味ないけど。動画が好きなだけだし」
グッズ。ボイス販売。まるでアイドルだ。Vチューバーってそんなことまでしてるんだ。
後でもう少し調べてみようかな。
そうひとり決意を固めて、私は鬼頭さんの背中を見送った。
