なんでアイツなんかに

昼休みのことはなかったかのように5限、6限と過ぎていく。そして帰りのホームルームでは松田先生が来週に行われる青春祭、いわゆる文化祭についての説明をしていた。私は書道部に所属していて作品を展示する。しかしもう完成したため特にやることはない。部員の人たちはみんな優しくこんな私とも仲良くしてくれる。特別仲が良い訳では無いが、話していて楽しい。だから用が無くても部活には毎回顔を出している。
「お!!紗和ー!今日も来たのか!!」
最悪だ。部室の戸を開けた瞬間、最も話しかけられたくない人に話しかけられてしまった。彼の名は吉野太陽。同級生で同じ書道部に所属している。坊主で日焼けしていて書道部に最も似合わない人間だと思う。野球部でお茶出ししてろ。と毎回思うほどに。
「まぁね、特にやるのとはないけど。」
「あ、そういえばお前の大好きな舞先輩が話あるってよ。たしか青春祭のことで…とか言ってたな。」
〝舞先輩〟というワードを聞いた瞬間、おもちゃを見る少年のように目をキラキラ輝かせた。望月舞先輩は部長であり私の憧れの存在である。優しくて、可愛くて、字が上手くて綺麗な黒髪ロング。一つに括ると尚良し。語ろうと思えば3時間は語れる。推しに近い存在でもあった。