執事とメイドは、お嬢様のために!


満腹状態で午後の授業を乗り切り、放課後となりました。

帰り支度を始める椿と桜を手で制し、お嬢様は“用事がある”と言って一人どこかへと向かいます。

もちろんそのままお嬢様をお一人にさせるわけにはいきません…椿と桜は後をコッソリ追いかけていきました。


「ここは…校舎裏?」


「お嬢様はここに何のご用があるのかしら…」


しっかり手入れされ、ゴミの一つも落ちていない校舎裏にお嬢様が佇んでいます。

そこに誰かが来る気配と足音を感じ、椿と桜が息を殺して木の影に隠れました。

現れたのは男子生徒。

手には二つの花束が抱かれていました。


「ま、まさか…今朝の下駄箱の不届き者…!?」


「二つも花束を用意するなんて、どういう策略なの…!?」


動揺しすぎて二人の体が細かく振動します。

その姿はまるでタミ子さんかスマホのバイブレーションのよう。

ガサガサと揺れる木。

不自然極まりないですが、ベストなタイミングで風が吹き抜け“なんだ、風か”とお嬢様と男子生徒にバレる事はありませんでした。

男子生徒とお嬢様が一言二言、言葉を交わします。


(受け取るのか!?受け取るのですかお嬢様!!)


(花束二つでお嬢様のお心を掴むだなんて…!そんなの…そんなの私は許せません…!!)


そんな光景を見せつけられて嫉妬に狂う椿と桜。

もう使用人としての二人のライフはゼロです。

そして遂に…お嬢様が大事そうに二つの花束を受け取りました。

男子生徒が去っていきます。


(まさか言い逃げ!?告白だけして、レディーであるお嬢様をお一人にするだなんて紳士の風上にも置けない…!!)


(お兄様、これは裁判を起こすべきです!健気に贈り物を受け取ったお嬢様のお心を踏みにじる行為です!直ちに処罰して実刑を下すべきです!)


(そうだね桜…!これは許してはおけない!)


(お兄様…!戦いましょうお嬢様のために!)


アイコンタクトが素早く飛び交います。

なんだかいけない方向で二人の話がまとまってきていますが…そんな二人の名前をお嬢様が優しく呼びました。

どうやら、二人が後をつけていると気づいていらっしゃったご様子ですね。

さすがはお嬢様。

グループの時期当主となるお方だけあり勘が冴えていらっしゃいます。

椿と桜はお互いに顔を見合わせながら、すぐにお嬢様の前に現れました。

お嬢様は優しく微笑みながら、二人に花束を渡します。

先程の男子生徒が渡していった青と赤のラッピングをされた二つの花束。

渡されるがままソレを受け取った椿と桜は困惑しています。


「お、お嬢様…この花束を僕達に…?」


「えっと…その、どういう事でございましょうか…?」


お嬢様は言います。

これは二人の誕生日プレゼントだと。

そうです、今日この日は椿と桜の17回目の誕生日だったのです。

本人達はすっかり忘れていたようですけどね。

主人であるお嬢様は、キチンと覚えていてくれたのです。

あの男子生徒は花屋の息子で、お嬢様に依頼された花束を持ってきてくれただけの善良な生徒だったという事です。

訴えられなくて良かったですねー。