執事とメイドは、お嬢様のために!


午前の授業を終えて、お昼を告げるチャイムが鳴りました。

お嬢様のお腹も食事を求めてキュルキュルと鳴る頃、桜がシェフから預かっていた三人分のお弁当箱をカバンから取り出します。

可愛らしい二段重ねの赤い物がお嬢様の、桜の模様が入ったピンク色の物が桜のお弁当箱で、二人より少し大きめの紺色の物が椿のお弁当箱。

見晴らしのいい中庭のベンチに並んで座り、お嬢様が最初にお弁当箱のフタを開けました。

そこには…ツヤツヤとした真っ白な白米が詰められていました。

お嬢様のお顔が緩みます。


「お嬢様はお米がお好きですからね。シェフに頼んで今日はお米を中心としたラインナップにしていただいたんです」


「喜んでいただけて、私達も嬉しいです」


使用人たるもの、常にお嬢様の事を考えるのは常識です。

それが食事であろうとも手を抜かない。

桜と椿…二人は使用人の鑑でした。

さて、下段にはどんなおかずが入っているのでしょうか。

お嬢様が期待に胸を膨らませながら下段をのぞくと___そこには。


『…け、ケチャップライス…!?』


なんと、下段にも米。

しかもケチャップライス。

上に卵を乗せてオムライスにでもしようとしたのでしょうか?

重要な卵部分を忘れるなんて、本当にうっかりやなシェフですね。

だがしかし、どちらも米です。


(お米を中心にしたラインナップにとは頼んだがこれはやり過ぎだろう!主食と主食だろうが!)


(せめて卵は!どうしたの卵は!白い米と赤い米を交互に食べろとでもいうの!?お嬢様に!?)


固まったお嬢様に椿が声をかけます。


「お、お嬢様…僕のお弁当からで申し訳ございませんが、おかずを取って下さいませ___」


そう言って椿が自身のお弁当箱を開けると…そこには美しい茶色と黄色が敷き詰められていました。


「そ…そぼろ弁当…!」


慌てて下段を確認。

緑色の球体が顔をのぞかせます。


「これは…グリーンピース…!?」


そこには下段を埋め尽くす豆ご飯がありました。

あまりの衝撃に椿が思考停止する中、桜も自身のお弁当箱を開きました。

嫌な予感しかしませんね。


「こ…これは…炊き込みご飯…!」


最後の希望、頼みの綱である桜のお弁当箱…その上段にはゴボウやニンジン、レンコンやこんにゃくの入った美味しそうな炊き込みご飯。

その下段は…桜が中身を確認して、椿に力なく首を振りました。


「桜…まさか…」


「ええ、お兄様…下段は炒飯(チャーハン)だわ」


『………』


圧倒的に米でした。

シェフは椿の言葉を、言葉通りに受け取り調理をしたのですね。

アホでしょうか。

しかし、レバーパテと納豆を間違えるようなシェフですから、まだお弁当箱の中身があるだけマシなのかもしれません。

その後、三人は無言で米をたいらげました。

味は美味しかったのが救いですね。