ようやくお嬢様一行が学園の校門に辿り着きました。
当然の事ながら固く閉ざされた2メートル程の門を、椿と桜は見上げます。
「桜、僕を足場に」
「ええ、理解しているわ、お兄様」
お嬢様が息を整えている間に、椿の肩に桜がよじ登り高い校門を飛び越えます。
一足先に学園の敷地内に入った桜は、門につけられた南京錠の鍵穴を持っていたヘアピンで解錠。
なぜ普通のメイドがピッキングなどできるのでしょうか。
とにもかくにも門は開いたため、椿とお嬢様も無事に学園に入る事ができました。
校舎までの長い道をのんびりと歩きます。
遅刻しているのでもう少し急いでもらいたいですね。
校舎に入り、上履きを取り出すために桜がお嬢様の下駄箱を開きます。
その瞬間、桜の清んだ瞳が一気に血走りました。
「こ…これは…ら、らぶ、ら、ららららら」
「どうしたんだ桜、喉が潰れたオペラのような声を出して」
「お、お兄様…!お兄様、これを…!」
桜に促されるまま、下駄箱を見た椿の顔からスッと表情が消えます。
「…これは…て、手紙…!」
下駄箱に入っている手紙なんて高確率でラブレターでしょう。
いったい何年何組のどいつだ。
うちのお嬢様にラブレターなど送った身分知らずの不届き者は。
椿と桜はそう思い、中を確認したい衝動に襲われましたが…お嬢様に了解を得ない限り、使用人である二人に勝手は許されません。
…しかしこの手紙の存在を知らせていい物か。
二人が迷っていると、横からお嬢様が下駄箱をのぞき、手紙を手に取りました。
『あっ…』
手紙の差出人を確認したお嬢様が、嬉しそうに頬を赤らめて内容を確認しています。
(想い人か!?想い人なのですかお嬢様!?)
(そんな…私達のお嬢様が奪われてしまう…!)
お嬢様が上機嫌で手紙をカバンにしまう隣で絶望に顔を歪める使用人二人がそこにいました。
二人の心に渦巻くのは手紙の差出人、それに対する嫉妬と一方的な怒り。
それからお嬢様と授業を受けている間、二人は板書をするフリをしながらこの学園の男子生徒の情報を思い出してノートに名を連ねていきます。
「お兄様、女子生徒の可能性もあるのでは?」
「盲点だったな…いっそ教員も怪しい。全員調べようか」
「あの聞いてる?おーい。全く授業聞いてないねそこの二人。後で職員室にきなさいねー」
担任の先生のイラついた声も、椿と桜の耳を通り過ぎて消えていきました。
こいつらは学園に何しにきてるのでしょうか。



