さて、朝の楽しみといえば…そう朝食ですよね。
お嬢様も一流シェフの作る朝食をいつも楽しみにしていらっしゃいます。
本来ならば使用人である椿と桜は、お嬢様と同じ席で飲食などできませんが…海より広いお嬢様の懐の広さから同席を許可されていました。
広いテーブル。
その上に真っ白なテーブルクロスが敷かれています。
部屋の最奥に位置するテーブルの端、上座に座ろうとするお嬢様の椅子を椿が完璧なタイミングで引きました。
ベストな位置で座ったお嬢様の目の前。
白い皿に置かれたリネン製のナプキンを桜が丁寧に広げて二つ折りにします。
それをお嬢様の膝の上に、折り目をお腹側にしてゆっくりと置きました。
こうする事で口元などが汚れてナプキンで拭った際、膝の上に戻した時に折った内側が汚れを隠してくれるのですね。
ちょっとした情報です。
わざわざ調べた私を褒めて下さい。
ありがとうございます。
…さて、私の自我はこれくらいにして…お嬢様を囲むように右隣に椿が。
左隣に桜が座りました。
後輩執事とメイド達が料理を運んできます。
このお屋敷は広いため、執事もメイドもたくさんいるのですね。
ちなみにここにメイド長、タミ子さんはおりません。
タミ子さんに任せてしまうと体の振動でお嬢様がバリンバリンに割れた皿の破片を食事と共に口に入れる事になってしまうので得策でないのです。
じゃあ彼女の仕事は何かというと…そうですね。
陽の光りが射す暖かな場所で、趣味の編み物に精を出しながら一日でも長く元気にいてくれる事ですかね。
さて、運ばれてきた料理がお嬢様と椿、桜の目の前に置かれました。
今日のメニューはふわふわのオムレツにカブとアスパラガスのソテー、香ばしい香りの厚切りトーストに…お飲み物は紅茶でしょうか。
最後に運ばれてきたのはパンにつけるレバーパテ…の、はずなのですが。
お嬢様のだけ様子がおかしいですね。
椿と桜の表情が固まります。
(こ…これは…納豆…!?)
(そんなお兄様…!よりによってお嬢様の苦手な物がお嬢様のお席にだけ…!)
ネバッとした納豆が、自分はさもレバーパテかのように堂々とした佇まいでそこに鎮座しています。
納豆のくせに生意気ですね。
きっと、腕は一流ながらもうっかりやなシェフが間違えてしまったのでしょう。
このままでは口から納豆の臭いを漂わせるお嬢様が爆誕してしまいます。
色味のせいで気づいていないのか、お嬢様がレバーパテ…じゃない、納豆に手を伸ばし___。
「お嬢様、そちらのレバーパテは少し風味が強いかと…僕のレバーパテをお食べ下さい」
(お、お兄様…!ご自分を犠牲にして___!?)
椿が自分のレバーパテと納豆を交換し、事無きを得ました。
テーブル越しに兄妹がアイコンタクトを取り合います。
(お兄様…!大丈夫なのですか!?)
(平気さ…お嬢様のためならばこのくらい…少し長く歯を磨けばいいだけさ)
(お兄様…素晴らしいお姿でした…!)
桜は歯を食いしばりながら、心の中で兄に敬礼を捧げました。



