彼女になりたいし彼女になってほしい(仮)

それから漫画を貸すとメッセージで感想を送ってくれるようになった。

『主人公の女の子に嫉妬した女の子がいじめを始めるくだり最悪。こーいうのめっちゃ苦手ー』
とか
『こないだの俺様男子は苦手やったけど今回の俺様男子はなんか好感持てる』
とか
『この人の絵と物語の構成めっちゃ好き!』
とか
『優柔不断な女にイライラしてる。漫画なのにw』
とか

漫画を通して杏菜の事が少し分かったような気がして嬉しかった。

『借りてた漫画今日読み終わったから感想言いたいねんけど、今からネイルしようと思って、電話できたりする?』
『あ、電話嫌だったらいいよー』

気付くのが遅くて2通のメッセージが入っていた。

『電話大丈夫!』
『掛けて良くなったら掛けて。こっちはいつでも◎』

電話初めてだ…。緊張するー…。
心臓がバクバクとうるさくて深呼吸をする。

数分深呼吸をしても心臓はバクバクしたままだが、意を決して杏菜に電話をかけた。


「おつ〜」
と軽快な杏菜。
「お疲れ様です!」
と勢いよく返事をしてしまった私が
杏菜の笑いのツボに刺さったらしく、ケタケタと笑う杏菜。

「ヒィ~ヒィ〜ー、おもろいなー、有希子〜うんうん、おつかれ、」

ひとしきり笑い終わった杏菜は漫画の感想を話し始めた。

「ヤンデレって初めてだったけど、良かった!面白かったよ。」
「ほんと!?よかった。ちょっとだけグロいからどうかと思ったけど。」
「これくらいなら平気〜!こんなに愛されるのいいなぁって途中までは、思ってたけど、現実的では無いよなあとか思っちゃったわ〜没頭系ではないかも。」

現実で恋愛をしたことない私に現実的に考えるという発想はなく、新鮮だと思った。

多分杏菜的に、現実的か考える暇もなく、読み進められたら没頭出来る作品なんだろうな。まさに寝る間も惜しんで読みたいような。

今回のは途中で冷めてしまった感じかな。

「なるほど…現実的に考えたことはなかったから新鮮な感想。」
「え、そうなん!?漫画読みながら後半、何回かこんなん現実にあるか!?ってツッコんでたよ!」
「そもそも漫画として物語としてみてるから、現実との比較っていう概念がなかった…」
「それも分かる。現実にいなかったとしてももしこんな奴いたら、おもろいやろうな〜とかは思った!」

「理想を投影しちゃってる漫画もあるもんね。大道王子様系とかはそんな気がする。」
「あー最初らへんに貸してくれてたやつとかね。」
「あー、そうそう!」
「うちの学校の王子様は片桐くんだと思ってるんだけど、有希子はどう思う?」

…片桐くん??誰????

「存じてないです。ごめんなさい。」
「えー!!まじ!?1つ上の先輩で3年3組の高身長で彼女がコロコロ変わるモテ男!」

3年生の男子なんて関わりないですよ…

「初めて聞いた。」
「片桐くん知らない女の子がいるなんて新鮮!有希子のそ~言うところいいな〜周りに流されない感じ!」

けなされてるのか?褒められてる気がしないけれど、杏菜の言い方的に悪い気もしない。

「ちなみにその人ってイケメンなの?どのあたりが王子様っぽいの?」
「いや〜私的には分からないけど、顔は確かに整ってる…と思うよ?。愛結とか麻鈴もよくかっこいいって言ってる!」
「そうなんだ。」
「あと優しいらしい。知らんけど。まぁ麻鈴は最近彼氏できてそちらに夢中なんだけど。」
「笠崎さん彼氏できたんだ。」
「そうそう。隣のクラスのムキムキ」

「ムキムキ(笑)」

少し不貞腐れた様な杏菜の言い方が面白くて笑ってしまった。

「有希子のツボ分からん!ムキムキがツボ?」
「え、自分でも分かんない!(笑)」

そしてどんなムキムキなんだろうかと想像してまた笑えた。

そして、そして、
隣のクラスのムキムキと言う、その表現が面白くて笑いが止まらなくなった。

「ハァハァ、杏菜おもしろい!」

ひとしきり笑って杏菜に言うと

「いや、なにが!?ムキムキが?」

と言って、また私を笑かしてくる。
そしてまた笑いが止まらなくなる。

「もう!杏菜ムキムキって言うの禁止!」
「なんでそれがツボなん?(笑)訳わからんすぎ!」

と杏菜も笑っていて、2人でしょうもない事で笑っている事にまた笑えてきて、また2人で笑っていた。

「ハァ、しんどい!おなか痛いし!笑いすぎて涙出てきた!」
「いや、こっちのセリフな!ツボ変やねん有希子が!」
「杏菜が面白いのがいけないの!」
「何も面白いこと言ってない!」
「いや、充分面白いから」

初めてこんなに笑った。
笑いすぎるとお腹が痛いのも涙が出るのも知らなかった。

些細なことでケタケタ2人で笑って杏菜との電話はすごく楽しかった。