彼女になりたいし彼女になってほしい(仮)

それから次の日に10冊完結くらいの単行本の少女漫画を紙袋を2重にして入れて杏菜さんのロッカーに入れておいた。

そしたら、その2週間後に私のロッカーに漫画が返却された。

その次の日に同じくらいの容量感の漫画を杏菜さんのロッカーに入れるとまた、2週間後に私のロッカーへと返却された。

学校で話すことはほとんど無いし、ましてや自分から杏菜さんに話しかけるハードルも高くて、漫画の話をする時間が無かった。

感想とか、良かったのかとか、好きな系統だったかとか、
次の漫画を選ぶ参考にしたいから、話したい場合、
どうすれば良いかコミュニケーション能力が無い私には分からなかった。

杏菜さんの周りには男女、学年問わず常に誰かがいて
その間に割り入って話しかける勇気は微塵も無かった。



5.6時間目、2限続けて華道の実習の日
5時間目と6時間目の間の10分休憩中

「有希子の生け花もしかして、センス抜群??これ中心にして皆で写真撮ろうー!部屋にいる女子集合ー!」

と私に近寄ってきた杏菜さんが集合をかけていた。

「なになに〜!」
「写真写りたーい!」
「撮ろう〜!」

と部屋にいたクラスメイトの1軍女子達が私の席の周りに集まってきた。

「おい〜杏菜〜!山田さん困ってない?山田さんのお花可愛いからって絡むのやめろ〜」

と笠崎麻鈴さんが止めに入ってくれた。

「こんなんでよければ、どうぞ!どうぞ!」
と席から離れようとすると杏菜さんに止められた。
「いや、有希子も入るんだよー!内田ちゃんもはいってー!」

と、杏菜さんとコチに挟まれ、私の生けたお花と他クラスメイト6人と写真を撮ることになった。

杏菜さんは内カメラで器用に全ての被写体を納め、シャッターを切った。

「え!めっちゃ良い!盛れた!」

とご機嫌な杏菜さんを見て私も嬉しくなった。

「皆送っとくわー!有希子も写真送るわ!QRだして!内田ちゃんにも送ってあげて〜」

と写真を送ってもらうついでに杏菜さんの連絡先も知った。
この数分で杏菜さんに話しかけてもらって、お花褒めてもらって、一緒に写真撮ってもらって、その写真をもらえて、連絡先まで交換できて嬉しいことのオンパレードで心臓がバクバクだった。

よろっと書いた可愛いギャルのスタンプと共に写真が杏菜さんから送られてきた。

その夜杏菜さんから連絡がきてまたそれも嬉しかった。

『おつ\⁠(⁠ϋ⁠)⁠/⁠♩いつも漫画ありがとっ!』
『いえいえ!好きなのあった?』

いま杏菜さんには3種類目を貸してる途中だけれど
どれか刺さるのあったかな…。

『今のやつ結構好きかも』
『溺愛系?』
『それもそうだけどなんかストーリーの浮き沈みが激しくなくて良い』

まぁまぁ溺愛系で、浮き沈みが激しくないのが良いのかな。
勝手なイメージだけど意外だ。

『わかった。また貸す漫画考えて杏菜さんのロッカーに入れておくね。』
『杏菜さん呼び嫌だー!やめてー!杏菜ね!杏菜!』

…難易度高い。
と数分トーク画面を開いたまま葛藤するも、
数分経って何と葛藤しているのか分からなくなって



『分かったよ。杏菜!!』
と返事した。

にんまりみたいなスタンプがきて、呼び捨てでご満悦そうな杏菜が想像できた。

直接呼ぶのはハードル高すぎるけれど、
とりあえずメッセージから呼び捨てを初めてみよう。