乙女ゲームの親友ポジに転生した天才チート系令嬢、ストーリーのそのあとの方が大変だった件


 乙女ゲーム『覇者の集い』主人公、ルナーシャ・ピュアジー。
 そしてRPGモードを楽しみたい男性プレイヤーのために男主人公が実装された。
 それがアルカ・ピュアジー。
 二人は双子として実装され、大まかなストーリとしてまず『聖者の紋章』を持って生まれ、十四歳で辺境の貴族に発見される。
 発見された『聖者の紋章』の持ち主は強制的にアーレシュア王国首都にある貴族学園に入学して貴族の常識や教養を身につけることを強要されるのだが、二人は当然故郷に戻ることを望む。
 だが王国側は『魔王を討伐しなければ、卒業は認めない』という。
 だから仕方なく、三年間学園で学びながら仲間――攻略対象を攻略して増やしていく。
 その過程で友情が恋に、恋が旅で信頼に。
 学園から出て魔王を討伐するべく魔族国に向けて旅立ち、新たな出会いで別の攻略対象と恋をしてもいい。
 アルカは戦闘特化の主人公だから、恋愛はないけれど……攻略対象との友情を育むことはできる。
 男同士の友情に反応する層がそれで爆増えしたのは運営にとって思わぬ誤算だったのが笑えるけれど、それで勢いづいた運営が出した次の一手が男性プレイヤーを増やすために実装するのが『男の娘』なので運営も運営でちゃんとイカれている。
 そんな感じでストーリーは王道の『学園もの』+『冒険』もの。
 上記の理由で運営がちゃんとイカれているため、キャラクターもそこはかとなく様子がおかしい。
 胸キュンストーリーは確かにあるのだが、ギャグ要素が強いのだ。
 もう一度、大事なことなので言うが一応胸キュンストーリーはある。
 乙女ゲームの要素もある。
 あるったらあるのだ。
 問題はキャラクターの様子のおかしさの方の印象が強くて、真面目に胸キュンシーンを見ているし本人たちも胸キュンシーンをやっているはずなのになんか知らんが面白いが勝ること。
 それが癖になるというか、いいのだ。
『覇者の集い』がスマホからソフトになって、アルカという男主人公がDLCで追加されたのも、そういう『なんでが面白いが勝る』のが、女性プレイヤーだけでなく男性プレイヤーにもある程度ウケたからに他ならない。
 ある種、乙女ゲームでありながら“男性プレイヤーも楽しくプレイできる”面白さが売りと言っても過言ではないからだろう。
 そしてこの世界は――私が転生してから十八年、主人公たちは魔王を倒すという役割を終えた。
 そう、この世界では魔王が討伐されて二週間ほど経っている。
 物語の中の魔王というのは、立派なやられキャラとして自我を持たない(・・・・・・・)怪物だ。
 魔族の腹から突如生まれるそれ(・・)は、『悪魔の母』と呼ばれる人型の女のような姿をした物体(・・)
 通常の魔物とまったく異なる生態を持つ『汚染魔物』を腹にある口の中から産み落とす装置(・・)
 汚染魔物が通常の魔物とどう違うのかというと、食ったモノの特性を自分のものとできるところだ。
 人間や魔族を食えば、魔物であっても知性を得て“学習”を始める。
 成長すれば当然、それらは人類、世界を滅ぼす脅威となるだろう。
『覇者の集い』の主人公たちは生まれながらに汚染魔物の汚染を浄化する『聖者の紋章』を持つ。
 魔王や汚染魔物に対抗できる、唯一の存在。
 そして事前に学園で戦う術を身につけていたことで、魔王が出現してすぐに故郷経由で魔族国に入り、魔王を発見して破壊――討伐に成功した。
 ほとんどの汚染魔物が生まれて、知性が人間や魔族ほどに成長するより前に倒すことができたのだ。
 だから被害は最小限。
 そのはずであった。
 
「魔族国の現状を、誰も知らないのですか?」
「はい。まだ魔族国には汚染魔物が残っているという話でして……現状調査が進んでいません。おそらくそれもレイス様にやっていただきたい、ということなのでしょう」
「要するに丸投げということね」
「「そうですね」」
 
 翌日、公爵家にやってきてくれたのは文官のエルワーズと騎士見習いのアーカー。
 少ない荷物を二人に頼んで持ってきてもらった貸し出し馬車へ運び込む。
 なんと私の荷物はトランク一個に収まってしまった。
 旅していた時にはもっと最低限だったけれど、実家のはずの屋敷にも私の私物はこれしかなかったのね。
 まあ、あまり貴族らしいものに興味がなかったから仕方ない。
 ドレスも装飾品も最低限、表に出る時にだけレンタルしてきて身につけさせて終われば返却。
 別に家の家計が切迫しているわけではない。
 仕事人間で、仕事以外に興味がないんだもの。
 娘には最低限の教育と物を与えればいいと考えている。
 その方が効率がいいから。
 愛情はない。
 夫婦愛なんてものもないのだもの。
 昨日の夜、両親に言われたことは「この家は従兄弟のアーノルドに継がせることにする。お前はもう帰って来なくていい」ということ。
 事実上の勘当だ。
 
「え?レイス嬢、荷物はこれだけですか?連れて行く使用人や侍女は……」
「そういうものはないわ。我が家はいわゆるミニマリストなの。有能な使用人が最低限いればいい、大勢雇って経済力を見せつけるのは無駄という考え方だから。自分の使用人は自分で雇え、と言われたわ。だから向こうについたら向こうで探すわ」
「な、なるほど」
「だからあなたたちも向こうでの生活は自分のことは自分でやると思ってね」