乙女ゲームの親友ポジに転生した天才チート系令嬢、ストーリーのそのあとの方が大変だった件


 顎に手を当てて考えるふりをする。
 それは事実だろう。
 前世の国……日本でも大地震からの復興には数十年の何月を要する。
 いくら小さな部族のみの国家とはいえ、残っている汚染魔物を処理しながら通常の魔物からも国民を守りながら、荒らされた国を元に戻すのは数年でなんとかなるとは思えない。
 日本のように医療技術が発展しているわけではないこの国の平均寿命は六十代。
 貴族はもう少し長いが、魔族国は魔力が多く普通の貴族でも魔力過多による弊害が色々と出るのだと聞いたことがある。
 まあ、私やルナーシャ、アルカなどゲームの登場キャラクターは基本的に魔力が高い。
 魔族国を旅する前提だから、そりゃあ当たり前っちゃ当たり前だが、中には主人公の『聖者の紋章』の加護で魔力が高まった、なんて説明の攻略対象もいるくらいだ。
 魔族国の魔力濃度は一般貴族には厳しそう。
 その観点からも、主人公よりも魔力の高い私は適任、か。
 
「面白そうですね」
「ほう」
 
 私の言葉に国王陛下は面白そうに目を見開く。
 だって、魔族国ってゲーム内であまり深掘りされていないんだもの。
 いくつかの町や村は描かれているけれど、ゲームの中でも汚染魔物に襲われて滅ぼされていることがほとんど。
 実際に私たちが旅をした時も、生き残りは大きな町に行ってしまった、という言葉を聞いた。
 残っているのは部族兵か、逃げ遅れた老人。
 あの国を、復興させる。
 私、前世は乙女ゲームっぽくない乙女ゲームや村作り、町作り、国作り、牧場経営とかそっち系のシミレーションゲームも大好きだったの。
 リアルでそれが経験できるなんて、テンション上がるじゃん?
 できるものならちょっとやってみたいって思っていたのよね。
 
「ぜひ、お受けしたいと思います! 魔族国の復興の任、お任せください!」
「ではすぐに認定証を作ろう。準備をしておいてくれ。必要なものはあとからでも構わぬから、手紙で報告してほしい。一緒に連れて行きたい部下がいれば連れて行って構わぬからな」
「ありがとうございます。では、文官のエルワーズと騎士アーカーに声をかけてもよいでしょうか」
「もちろん」
 
 文官エルワーズと騎士アーカー。
 この二人も攻略対象だ。
 学園からルナーシャが中途半端に攻略を進め、放置していた数人のうちの二人で、今回の仕事にぴったり。
 本人たちが了承してくれるかはわからないけれど、関係値は“友人”くらいにはなれているはずだから、王命による復興のためなら断らないかも。
 まあ、ルナーシャが本当に中途半端に攻略をしてしまったから、もしかして嫌がられるかもしれない。
 その時は潔く一人で行くか。
 
「では、我々はお暇いたします」
「ああ。本当に、此度のこと、すまなかったな」
「お気になさらず」
 
 ちら、と陛下と王妃様が頭を下げたので驚いた。
 お二人は悪くない。
 マジシンプルにケビンが悪い。
 しかし、それにしたってケビンはなぜこうもルナーシャとの結婚に執着していたのかしら?
 
「あの、ところでケビン殿下はルナーシャが聖女でなくても結婚していましたか? それだけお聞かせ願いたいのですが」
「当然だろう? 私はルナーシャを愛している。彼女が聖女だからこそ王族の私に相応しいと思っているが、もちろん理由はそれだけではない! 天真爛漫なところや、優しいところ、魔王を討伐に向かう正義感と使命感の強いところ、勇敢なところなど褒めるところには事欠かない。なにより小柄で可愛らしい。お前と違ってな」
「……そうですか。そうですね」
 
 小柄で可愛らしい。
 確かに身長170センチの高身長で、それなりに色々なところがでかい私と違って150センチで色々なところが平らで童顔なルナーシャは小動物のような可愛らしさがある。
 あまり知りたくなかったけれど、頬を染めてルナーシャを讃えるケビンの言葉や態度に嘘はなさそうだ。
 演技ならば[鑑定]のスキルを持つ私にはすぐわかるもの。
 ――ただ、[鑑定]のスキルがあるからこそわかってしまった。
 ケビン・アーレシュア……こいつ……こいつロリコンだ。
 最悪すぎる。
 これは知りたくなかった。
 つまり、幼く見えるルナーシャはケビンにとって合法ロリ!
 聖女という立場もあり、この上なく条件として最強!
 そりゃあデカ女で表情筋が仕事してない私よりも結婚したくなるに決まっている。
 でも、それって恋とは違うでしょ。
 ケビンはルナーシャを恋愛対象として見ているわけではなく、都合のいい愛玩動物として欲しているってことだ。
 そんなのルナーシャだって嫌がるに決まっている。
 ケビンの返答を聞いた国王陛下と王妃様のガチドン引きした表情を見てほしい。
 我が子の知られざる性癖を高らかに宣言されて絶望感すら滲んでいる。
 ……ぜひとも、今後はこの性癖が暴走しないようにご両親から躾をしていただきたいものだ。
 
「では失礼いたします」
 
 部屋から出ると、両親は深く溜息を吐いてから私を振り返る。
 その視線は今までの“道具”を見る目ではなく、“処分に困るゴミ”を見る目だ。
 私に続いてアルカとルナーシャが出てきたので、すぐに“優しい理解ある両親”の仮面を被ったが。
 
「魔族国というと、ルナーシャさんとアルカさんの故郷のさらに東、よね? お二人は故郷に帰るとのことだけれど、もしよかったらわたくしたちの娘の力になってはくれないでしょうか?」
「もちろんです! 任せてください!」
「必ずレイスの力になります!」
 
 ああ、うちの主人公ズがシレっと騙されたわね。