乙女ゲームの親友ポジに転生した天才チート系令嬢、ストーリーのそのあとの方が大変だった件


「というわけで、三日後丸一日私たちはお出かけになったの。新しい人しかいなくなるけれど、大丈夫?」

 村に帰ってからマイキーとナシュにしゃがんで目を合わせながら、聞いてみる。
 私たち相手でも最初はかなり怯えていた二人。
 新しい住人たちにもまだ馴染んでいない。
 だから心配で、聞いてみる。
 アルカもルナーシャも、アーカーもエルワーズも私と一緒に一時帰国するから。
 マイキーとナシュは顔を見合わせてから、少しもじもじとして。

「大丈夫。これから一緒に、この村をよくしていく人たちだから。お姉ちゃんたちがお出かけするまで、いっぱい話しかけてみる。ナシュはがんばれる?」
「ナシュはやだ。まだこわい。おねえちゃん、あーか、える、行かないでほしい」

 うるうるした眼差しでそんなこと、可愛い幼女に言われたら胸が痛む。
 なんと、私にも胸キュンすることがあるのか。
 ナシュの可愛らしさに胸がズキューンときた。
 女の私でこれなので、アーカーとエルワーズはもっと胸にでっかいハートの矢がブッ刺さったらしい。

「う、ううう。レ、レイス嬢、俺だけ残ろうと思うのだがどうだろうか」
「僕かアーカーのどちらかが残る方向で、調整していただけないでしょうか?」
「うぐ……そ、そうね。まだ早いかもしれないものね」

 それになにより、この子たちは親を汚染魔物に殺されて、約二週間、子ども二人で生きてきた。
 急に人が増えてナシュはマイキーからまったく離れなくなっている。
 多分、ストレスだ。
 人見知りのナシュにとっては私たちとの生活も緊張続きだったはず。
 それなのに、こんなに急速に環境が変わってしまって、まだまだ混乱しているのだろう。
 そんな中、私たちのことはだいぶ受け入れて、こんなふうに言ってくれるのは……なんというか……胸が痛い。きゅんの意味で。

「やーん、かわいい〜。知らない人が苦手なんだ?」
「そうなんだよね。僕もまだあんまりお話ししてもらえてなくて」
「せ、せいじんさまは、ママとパパのはたけ、もどしてくれたから、うれしかった」
「本当? 僕とはお話ししてくれる?」

 こくん、とアルカ相手に小さく頷く。
 マイキーの背中から出て来ることはないけれど。
 それでもちゃんと話してくれて、場の空気がほのぼのとしたものになる。
 そうだよねー、嬉しいねー。

「わたし、ルナーシャ。アルカとは双子なの。わたしも『聖者の紋章』があるんだよ。もしも汚染魔物が出たら、わたしもやっつけてあげる! レイスとアルカとお出かけして、帰ってきてからわたしもこの村に住んでお手伝いしたいと思ってるの! いいかな?」
「せいじょさま?」
「へへへ。うん! まあー! そう!」
「わ、わあ」

 やはりナシュは女の子。
 聖者のアルカよりも、聖女のルナーシャに憧れの眼差しを向けている。
『聖者の紋章』を持つ二人は、謎に子どもに好かれやすい。
 ナシュも例に漏れず、アルカとルナーシャにはすぐ懐いてくれた。
 ところでさらりと流しそうになったけれど……ルナーシャ、この村に住むつもりなの?
 私、一応あなたたちがそういうことを言い出さないためにディニールで食糧生産をしてほしいと頼んでいたはずなのだけれど。

「ルナーシャ、支援食糧の生産はどうなっているの?」
「あ、えーと。……でも、だってケビン殿下からの手紙や使者がウザすぎるんだもん。追い返したら別な人が来るし、手紙なんて毎日毎日毎日毎日……! しかも、王都の貴族からも『養子にならないか』っていう手紙まで来るんだよ!? ウザいよ! 私が殿下と結婚しないのは、身分が足りないからでしょう? とかさぁ! 普通に! シンプルに! ケビン殿下が嫌いだからだって言ってるのに!」
「ああ……」

 聖女を養子にすれば、家としての家格に関わる。
 しかもそのまま王子妃になれば、家格が上がるのは確約されたも同然。
 こんな辺境に使者を送るくらいなら、ルナーシャが在学中にもっと媚を売っておけばよかったのに。
 ばかねぇ。どいつもこいつも先見の明がなさすぎる。
 そんなやつらの養女になりたいと思う子がいるわけないでしょうよ。
 特にルナーシャみたいに自我の強い子が。

「だからわたし、陛下に今度こそケビン殿下がしつこくしないようにってお願いする。なんで綺麗なご令嬢がたくさん選びたい放題のくせにさぁ! わたしにばっかり執着すんのぉ!?」
「そうだよね」

 アルカもルナーシャがここまで執拗につきまとわれている理由がわからないのか、頷いている。
 だが、私は知っている。
 ヤツが合法ロリのルナーシャをお望みなのを。
 そう、ルナーシュは、合法ロリ。
 見た目幼い十代前半の女の子に見え小柄さだが、成人済みの十八歳。
 しかも聖女。
 歴代『聖者の紋章』持ちは生まれた国の王家に嫁ぐ、もしくは王女に輿入れすることが多いから、ケビンもその気になってしまうのは仕方ない。

「それじゃあ、そろそろお夕飯の準備をしましょうか。私たちが留守の間の分もいっぱい作ってアーカーとエルワーズに預けておくから、いっぱい食べてね」
「うん!」
「レイスおねえちゃんのごはん、おいしいからだいすき」

 ……………………よし! このあと魔物肉狩りにいこう!!