乙女ゲームの親友ポジに転生した天才チート系令嬢、ストーリーのそのあとの方が大変だった件


「こ、これって俺たちが食べで大丈夫なのか?」
「魔物肉は魔力を抜かなければ魔力回復効果があるわ。でも、あなたたち別に今日魔法使っていないものね。魔力を抜いたものをあげるわ。はい」
「「ええ……」」

 なぜかドン引きした声。
 なにがおかしいの?
 水の入った瓶の中に、魔力を肉から分離して入れたのがそんなに異様に見えたのかしら?
 魔物肉から魔力を分離して吸い出すやり方は汚染魔物を見て考えついた。
 魔力はそもそも物質ではないので、魔力を宿す媒体が必要だと思ったのだ。
 それに関してはゲーム内で『魔力回復薬』というものがあり、これはそれを参考にして作った。
 媒体は液体。
 とりあえず自ら始めてみようと思い、小瓶に水を入れて汚染魔物の魔力吸い出しをイメージして絞る魔法をかけてみたところいい感じにできてしまい、魔物肉の魔力を水の入った小瓶に絞り出した結果『魔力回復薬』になったわけ。
 その後旅をしながら効率のよさを追い求め、今の感じになった。
 まあ、ただそれだけ。
 そんなドン引きされるようなことをした覚えはないのだが。

「ちなみに、その魔力を溶かした水はどうするんだ?」
「薬草を混ぜて安定させるわ。魔力回復薬の出来上がりよ」
「そんなことできるのですか!?」
「混ぜる薬草の量で上級、中級、下級の品質に分けられるし、他の素材と合わせれば多分別な薬も作れそうなの。せっかく魔族国にきたのだし、そういう研究もしたいわね」

 メモしておこう。
 もしも魔力を凝縮して人工の魔石が作れたなら、貴族の特権である魔道具の使用や魔法を平民の冒険者なども使えるようになる。
 そうしたら、世界の常識は塗り変わるんじゃないかしら。
 攻略対象でも魔法は平民出身者には使えなかった。
 たとえばアーカー。
 彼、貴族籍ではあるものの魔力が非常に低く、身体強化の魔法を使っても通常の貴族の身体強化には敵わない。
 それが彼を“落ちこぼれ”という評価に落とした。
 しかしルナーシャに認められ、勇気つけられる。
 アーカーのストーリーでは、アーカーの筋肉をバチクソに鍛え上げた結果身体強化を使わずともすべてを筋肉で解決する剣聖が爆誕するわけだ。
 シンプルに脳筋なので意外と嫌いじゃないストーリー。
 同じくエルワーズも貴族にしては魔力量が低いとされている。
 エルワーズのストーリーも似たようなもので、ルナーシャに見初められて勇気つけられることと、ルナーシャの境遇――平民でありながら『聖者の紋章』を持つことで膨大な魔力量を持ち、実家から無理矢理貴族社会に連れてこられ魔王を倒すために戦う術を叩き込まれる年下の少女――を知って、彼女の力になりたいと大奮闘。
 魔法を誰よりも効率的に、かつ迅速に使えるよう努力をした結果、魔力量が増え、いつしか賢者と呼ばれるほどに魔法を極めることになる。
 二人に共通するのは『貴族なのに魔力が少ない』こと。
 彼らは攻略対象だから魔力が少なくとも“覇”の道を歩むことができたが、少なくとも普通の平民は魔法も魔道具も使えない。
 人工魔石が作れたなら、魔族国のように誰でも魔法を使えるようになる。
 誰でも魔道具を使えるようになるのだ。
 それってすごく、夢のようじゃない?
 原始的な生活が、豊かな文明を甘受できるようになるのだもの。

「クックックッ……なにより、さぞや大儲けできることでしょうね……クックックッ」
「「わ……」」

 なにちい◯わみたいな声でドン引きしてくれているのかしら。
 失礼しちゃう。

「レイス嬢、魔物肉、ありがとうございます。ところで、そのドス紫色のおどろおどろしい液体は……?」
「これですか? 魔力回復薬の原液です。これに薬草を混ぜて煮詰めて濾すと、様々な魔力回復薬になります。他にも魔力を使う薬に使えると思って、溜めておこうかと」
「な、なんと……。の、飲み物になるのですか……そ、それが……」
「ええ。……そんなにおどろおどろしいでしょうか?」

 話しかけてきたディブレだけでなくアーカーとエルワーズも一緒に強く“こくり”と縦に頷く。
 失礼な。
 ぶどうジュースみたいで美味しそうに見えるけどなぁ?
 まあ、多少なんかゲルっぽいのがぷくぷくしていて気持ち悪く見えないこともないのかもしれないけれど。

「このゲルっぽい部分。これをもっと圧縮して、物質として確立できれば魔石が作れるのではないかと思っているのです」
「魔石……!? 魔物から時折出るという、魔力が物質化したもの、ですか……!?」
「ええ。もしもそれが人工的に生み出せたなら、魔力のない平民もこの国の人のように魔道具を日常使いできるようになるでしょう? わたくし、そういう研究もしたいと思っておりますの」
「な、なんと……」

 ディブレの部下が肉の美味さに酒を取り出してきたあたりで、私に話しかけてきたらしい。
 まあ、転移魔法を頼んでいた部下に酒が入れば今日はこれ以上仕事にならないだろう。
 それならば、ここで腹を割って話をしようじゃないか。
 せっかくこの場にいるのだし。

「それで、わたくしが魔族国に来た理由なのですが」
「はい。手紙は読ませていただきました。アーレシュア王国は我が国を支援してくださるとのこと。しかし、我が国としてはお返しできるものがなにもございません」
「それを作り出すこともわたくしの仕事の一部ですわ」