人生の意味と価値 ①

部屋の窓から。


飛び降りる。


ここは、二階。


無理かもしれない。


怪我するかもしれない 。


でも、二人なら。


いける。大丈夫。大丈夫だ。


深呼吸する。


飛ぶ。


もちろん、着地が成功するはずもなく。


膝を擦りむいて、血が出てしまった。


でも、普段のママからの暴力より全くもってマシだ。


「大丈夫か?」


手を差し伸べてくれる彼。


「うん。」


手を取る。


さすがは男の子。


完璧に着地してる。


「バレるかもしれない。早く行くぞ。」


手を繋いだまま、走る蒼音。


その背中が、とても頼もしい。


一人は、怖い。


でも、二人一緒なら、話は別。


昔、SNSに没頭したことがある。


Simejiというアプリ。


私と同じ事情の人がいた。


実際会えた。


当時同い年の小学5年生。


彼女も傷だらけで。


私のママは卑怯だから服で隠されてるところをいつも殴っていた。


学校の友達に見られるのが嫌だから夏でも長袖で登校してた。


熱中症になったけど、誰も助けてくれなかった。


そりゃそっか。


公立の先生は、優しくない。


差別や偏見。


私の周りは、そんな最低な大人ばっかだ。


もちろんママが助けてくれるはずもなく。


一人で頭から水をかけて体を冷めさせてた。


校舎裏だからバレなかった。


話は戻るけど、その女の子は莉音っていう子。


加賀美 莉音。


あの子は深い復讐心をもっていた。


SNSで会おうという約束をして、会えた。


運が良かったと思う。久しぶりに笑みが溢れた。


でも彼女は親にバレて連れてかれた。


私はそれがとんでもなく嫌だった。


最後のあがきとして、偶然もっていた道具袋の中にあるハサミを取り出し、思いっきり
莉音の親に向かって投げた。


でも、神は私に微笑まなかった。


当たらなかった。


彼女のお母さんはそれを拾い、私に投げた。


その時の目が────。


醜く、憎悪に呪われた、不気味な色を宿していた。


刺さった。


肩に。


痛い。痛い。痛い。


こんな……こんな……。


私はあの時、感じたんだ。


親なんて、殺してやる。


いらない。大っ嫌い。死んでしまえ。


子どもはひ弱だから逆らえないって?


ふざけないで。


せっかく、会えたのに。


莉音に、会えたのに────!


台無しにされた。


莉音と私の人生を、壊したあいつ。


だいだい、大っ嫌いっ!!!


でも、そんな感情より────。


莉音が少しでも、少しでも──。


────幸せになってほしい。


そんな気持ちの方が、遥かに上回った。


ねぇ、莉音。


元気にしてる?


虐められてない?


もう二度と、彼女と会える機会はないと思うけど────。


幸せになってね。


私は気づけば、涙を流していた。


「……い、……おい。」


はっと気がつく。


頬に、冷たい感触。


上から下に、"なにか" が流れて行くような。


「……泣いてもいいが、その辺にしとけ。」


優しく私を見つめて、目元の涙を拭ってくれる蒼音。


私、幸せ者だな。


ほんとに、幸せ者。


こんな優しい人と出会えて、本当に良かった。


ラッキーだ、本当に。


だから、この幸せな時間を────。


大切に、感じて行こうと思った。


行き先は、公園。


結構遠くだけど、大丈夫。


勇気を出して、この星が瞬く綺麗な夜空を────。


涙混じりの瞳で美しい景色を見上げる。


また、いつか。


会えますように────。


莉音、大好き。


そう言えば、SNSで出会ったな。


寧々っていう可愛い名前の子。


自分は愛されてないって、投稿してた。


私もそれに強く共感して、一緒に喋った。


楽しかったなぁ。


また、会えるといいけど。