人生の意味と価値 ①

母が部屋を紹介する。


そっか。


なんかまだ受け止められないけど、家族になるんだ。


「あいにく、部屋がふたつしかないんです。私と蓮華さんは一緒の部屋にしましょう。蒼音くんと琉月は──、まあ一緒に寝れるわよね?」


……え?


なに、それ……。


よく知らないイケメン男子と寝る?


異性と。


よくある恋愛の……『 キュンキュンラブラブ同居生活♡二人の恋を行方はどうなるのか!?お楽しみに♪ 』 ……みたいな。


……。いらねぇ〜。


てか名前蒼音っていうんだ。


「は?いや、無理なんですけど。」


さすがに否定するよね。


「まあまあ、たまにはいいじゃないか。」


お父さん、脳天気すぎ!


もう決定という感じの雰囲気。


そして、────夜。


私はパジャマに着替えて、お風呂も入り終わったので部屋に向かう。


良かった。今日は殴られなかった。


ほっと息をついてドアを開ける。


「……。」


────彼がいた。


相変わらず蒼音はスマホを視線を向けていた。


スマホ依存症とかなのかな。


でも今日から私たちは家族になる身なわけだし、親睦は深めといた方がいいと思う。


「……なにやってんの?」


彼が座っているソファーの隣に座る。


「ゲーム。」


絶対に私の方を見ようとしない。


でも、答えてはくれる。


それはなんだかんだ嬉しい。


「……そっか。」


にしても暑いな。


そういえば昨日クーラー壊れたんだっけ。


私は長袖を腕まくりする。


何も考えていなかった。


傷が────。


あ、と口だけ動く。


やばい。どうしよう。


もし、彼がママに聞いたら。


『 虐待してるの? 』


私がチクったって、殺される。


「……それ。」


彼がようやく、顔を上げた。


至近距離。


整った顔立ち。


「母親から?」


……ああ。


彼の瞳を見て気づいた。


同類を見つけたような、あの飢えた期待。


私は、目を見開く。


「そ、うだけど。」


彼は目を瞬かせ、薄い唇を開く。


「親父は、俺に無関心だ。」


突然悲しいことを言い出した彼。


でも私は、おかしいとも、哀れとも思わなかった。


私が何も言わないのを見て、少し安心したように微かな笑みが溢れた蒼音。


その笑顔が、なぜかとても愛おしく見える。


「親父は俺を必要としない。ああ見えて放任主義者なんだ。」


"放任主義者"


なんだそれ。


子どもを愛さないなんて、放っておくなんて、無責任だ。


「そんな親父を俺は尊敬していない。実の父親でも、俺はあいつを愛さない。」


私は深く、頷いた。


「いいと思う。私もママを愛してない。」


「そうか。そうだよな。親なんて、気持ち悪い。」


「ね、ほんとそう。」


なんか、意見が一致する。


それがどうしようもなく嬉しかった。


この子となら。


────いける気がする。


私は僅かに、口角を上げた。