Side:琴音 蒼音 ( ことね あおと )
今何が起こった?
俺は驚愕した。
彼女は包丁を持っている大人に飛びかかったのだ。
勇気がある。
すごい。
────でも。
最期、首を絞められて死んでしまった。
救えなかった。
助けられなかった。
────支えてあげられなかった。
叫びたい。
これ以上ないって程に。
「……琉月、琉月!?起きて!起きてよぉ!」
眼鏡をかけている包丁を向けられていた女子が泣く。
知り合い、だったのだろうか。
俺が割り込めば、琉月は死ななかったかもしれない。
男の度胸を発揮して。
悔しい。
視界が滲むのを堪える。
警察、呼ばなきゃ。
琉月を殺した女性が俺に視線を向けた。
警察なんて、呼ばせない。
そう言っているように見えた。
……そ、うだよな。
逃げないといけない。
あの女性が俺を殺す前に。
足が固まって動かない。
どうすれば。
「そこのイケメン!走りなさい!逃げるのよ!莉音、行くよ!」
かけ声。
ある思考が横切った。
運動会の、クラスでやるかけ声。
力が、漲る。
やる気が、出る。
"あの" かけ声。
俺はその瞬間、走った。
光っている建物に。
ただ、ひたすら。
かけ声をした女子と泣いている女子も手を繋いで走り出した。
大丈夫だ。
大人より子どもの方が、身軽で足の速度はある。
「待てぇぇぇ!」
包丁を持って俺を追いかけてくる。
やっぱ、大人って馬鹿だな。
差別じゃないけど、男の方が足は速い。
走れメロスみたいだな。
いや、俺は追いかけられてる方だ。
追いかけてるのは、あっちだろ。
でもあの女性が今走っている意味は、不気味すぎる。
気持ち悪い。
死にそう。
追いつかれるかもしれない。
走ってて、深い深い焦燥感を感じる。
あいつは、メロスとセリヌンティウスの熱い友情と堅い絆とはかけ離れた、
────冷たい、狂気と憎悪の塊だ。
俺は背中から突き刺さる視線に、同時に恐怖を覚えたが────。
それ以上に、燃え上がる対抗心と殺意が上回った。
復讐心。
あまり人を恨んだことがなかった。
人と親しみ関わり、打ち解け合ったことがないから。
でも、なぜだろう。
琉月を殺されると、どうしようもなく俺を追いかける "あいつ" が憎々しく見える。
それほど、琉月という存在は俺にとって大きかったのかもしれない。
今日会ったばかりだけど。
来世、この世に生まれて来てほしい。
俺に会って。
────もし、俺を覚えてたなら。
お互い、築き合おう。
人生の糧となる、二人だけの絆を。
俺の人生は。
────まだここで、終わらない。
終わらせない。
終わるわけにはいかない。
俺は、信じてるから。
琉月が隣に居てくれるって。
輝かしく光る建物まで、あと一歩。
琉月、お前が愛おしいよ。
この愛は、誰にも負けないから。
この告白は、届くことがないかもしれないけれど。
必ず、会おう。
この世界で。
この世で。
────今世で。
俺は目の前にある眩しい入り口に、迷いなく飛び込んだ。
今何が起こった?
俺は驚愕した。
彼女は包丁を持っている大人に飛びかかったのだ。
勇気がある。
すごい。
────でも。
最期、首を絞められて死んでしまった。
救えなかった。
助けられなかった。
────支えてあげられなかった。
叫びたい。
これ以上ないって程に。
「……琉月、琉月!?起きて!起きてよぉ!」
眼鏡をかけている包丁を向けられていた女子が泣く。
知り合い、だったのだろうか。
俺が割り込めば、琉月は死ななかったかもしれない。
男の度胸を発揮して。
悔しい。
視界が滲むのを堪える。
警察、呼ばなきゃ。
琉月を殺した女性が俺に視線を向けた。
警察なんて、呼ばせない。
そう言っているように見えた。
……そ、うだよな。
逃げないといけない。
あの女性が俺を殺す前に。
足が固まって動かない。
どうすれば。
「そこのイケメン!走りなさい!逃げるのよ!莉音、行くよ!」
かけ声。
ある思考が横切った。
運動会の、クラスでやるかけ声。
力が、漲る。
やる気が、出る。
"あの" かけ声。
俺はその瞬間、走った。
光っている建物に。
ただ、ひたすら。
かけ声をした女子と泣いている女子も手を繋いで走り出した。
大丈夫だ。
大人より子どもの方が、身軽で足の速度はある。
「待てぇぇぇ!」
包丁を持って俺を追いかけてくる。
やっぱ、大人って馬鹿だな。
差別じゃないけど、男の方が足は速い。
走れメロスみたいだな。
いや、俺は追いかけられてる方だ。
追いかけてるのは、あっちだろ。
でもあの女性が今走っている意味は、不気味すぎる。
気持ち悪い。
死にそう。
追いつかれるかもしれない。
走ってて、深い深い焦燥感を感じる。
あいつは、メロスとセリヌンティウスの熱い友情と堅い絆とはかけ離れた、
────冷たい、狂気と憎悪の塊だ。
俺は背中から突き刺さる視線に、同時に恐怖を覚えたが────。
それ以上に、燃え上がる対抗心と殺意が上回った。
復讐心。
あまり人を恨んだことがなかった。
人と親しみ関わり、打ち解け合ったことがないから。
でも、なぜだろう。
琉月を殺されると、どうしようもなく俺を追いかける "あいつ" が憎々しく見える。
それほど、琉月という存在は俺にとって大きかったのかもしれない。
今日会ったばかりだけど。
来世、この世に生まれて来てほしい。
俺に会って。
────もし、俺を覚えてたなら。
お互い、築き合おう。
人生の糧となる、二人だけの絆を。
俺の人生は。
────まだここで、終わらない。
終わらせない。
終わるわけにはいかない。
俺は、信じてるから。
琉月が隣に居てくれるって。
輝かしく光る建物まで、あと一歩。
琉月、お前が愛おしいよ。
この愛は、誰にも負けないから。
この告白は、届くことがないかもしれないけれど。
必ず、会おう。
この世界で。
この世で。
────今世で。
俺は目の前にある眩しい入り口に、迷いなく飛び込んだ。

