「ダメーー‼︎」
無我夢中で右手を振りまくり、鉾先鈴を鳴らす。
(熊って鈴の音を嫌うんだよね⁉︎)
ところが、そんなことは全然なかった。
少しも怖がらない。
ひょっとすると、耳が聞こえていないのかもしれない。
熊が私をロックオン。
にも拘らず、思念が何も伝わってこない。
空っぽの眼窩。
中身も朽ちてしまったのだろう。
恨みも辛みも哀しみもない。
目的もなく攻撃してくるだけの魔物になってしまっている。
恐怖で足が震えて、一歩も動けない。
代わりに熊のほうが方向転換し、私に向かってやってくる。
「いやっ、来ないで‼︎」
干し桃を投げつけた。
投げた瞬間、ふわっと桃の甘い香りが漂う。
桃は熊の胸辺りにヒットした。
熊の動きが数秒間止まる。
その間、魔の気が揺らいだように見えた。
(もしかして効いた??)



