◻︎
山の麓は不気味なほど静まり返っている。
地域住民は避難していて、ここにいるのは私と蒼麻だけ。
違った、それと熊。
(うそっ、想像以上にやばい。めちゃくちゃ禍々しいんだけど……)
ひと目見て、私の即席の決意なんて、あっけなく吹き飛ばされてしまう。
熊は体長2メートルはないようだけれど、蒼麻と同じくらいか、もしかしたら蒼麻よりもう少し大きいかもしれない。
耳、鼻、口から、真っ黒な煙となった魔の気が絶えず出ている。
それが全身を覆って、実際よりもずっと大きく見せている。
私たちが立っている地点から熊までの距離は30メートルくらい。
が、それでもゾンビであることは明々白々。
(ひゃっ、こっちを見た‼︎)
身がすくむ。
背中を上下に揺らしながら、ゆっくりとこっちに向かってくる。



