くわばらくわばら! 私のバディは優しくない

「家に帰って支度しよう」


突っ込まれたクッキーに、口の中の水分をもっていかれ、私は喋ろうにも喋れない。


懸命に飲みこもうとしている間に、蒼麻はさっと手を上げてタクシーを止めてしまう。

自動で開いたドアに、ぐいっと押し込まれる。

なんと、蒼麻もそのまま雪崩れ込んできた。


(えっ、隣に座るの⁉︎)


タクシーの後部座席は狭い。

蒼麻は脚を開かないと座れなくて、膝はすれすれでこっちに触れてこないだけ。


(何か緊張するんだけど!)


これは、そういうのとは違う。

私は決してファン3号ではない。

この距離に慣れていないだけ。


蒼麻は、テキパキと運転手に道案内をする。

私だけが動揺しているのが悔しい。

このことは絶対にバレたくない。


蒼麻が座っているのとは逆の右窓を向く。

外の景色を見るつもりだったのに、窓に映る蒼麻の横顔が目に入ってしまう。

ほかに選択肢はなく、上を向いて目を閉じることにした──