月と花のエレジア

月蝕の夜は終わった。

空に、
静かな満月が戻っている。

フィオレリア王国では、
再び花が咲き始めていた。

黒花は消え、
世界は少しずつ平穏を取り戻していく。

そして──

王城の庭園。

白薔薇の咲く場所で、
エルシアは空を見上げていた。

「ここにいたのか」

聞き慣れた声。

振り返ると、
エリアスが立っていた。

白銀の髪が、
月光に照らされている。

エルシアは微笑む。

「なんだか、
全部夢みたいですね」

「夢では困る」

「ふふ」

静かな夜風が吹く。

以前なら、
この時間は苦しかった。

でも今は違う。

胸の奥に、
温かな花が咲いているみたいだった。

するとエリアスが、
そっと彼女の手を取る。

「……エルシア」

真剣な声。

エルシアが瞬きをする。

彼は少しだけ視線を逸らした後、
静かに言った。

「これから先も、
君の隣にいたい」

月光が揺れる。

「君が泣く時も、
笑う時も」

その青い瞳が、
真っ直ぐエルシアを映す。

「ずっと守らせてほしい」

エルシアの瞳が揺れた。

そして、
ふわりと笑う。

「……はい」

その瞬間。

庭園いっぱいに、
白い花が咲き誇った。

祝福みたいに。

すると少し離れた場所で、
アシュレイが苦笑する。

「はあ……
結局こうなるんだ」

隣ではネフィラが腕を組んでいた。

「兄様、
諦めが悪すぎます」

「だって失恋したんだけど?」

「知りません」

そのやり取りに、
ルキアが吹き出す。

シエルは「姉上おめでとうございます!!」と泣いている。

レオニスは呆れながら、
どこか安心したように微笑んでいた。

月の光。

花の香り。

そして、
繰り返していた悲しい運命は──

ようやく終わりを迎えた。

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第1部 ~完~