月と花のエレジア

白い花の中心で、
青年は静かに目を開いた。

白銀の髪。

透き通るような青い瞳。

月光そのものみたいな存在感。

その姿は、
どこかエリアスに似ていた。

「……っ」

エルシアの胸が強く脈打つ。

懐かしい。

会ったことなんてないのに。

青年はゆっくり、
エルシアへ視線を向けた。

その瞬間。

彼の表情が、
痛みを堪えるように揺れる。

『……花姫』

低く優しい声。

神殿の空気が震えた。

エリアスが眉を寄せる。

「誰だ」

すると青年は、
静かに目を閉じる。

『我が名は──ルクス』

月光が舞う。

『初代ルナリア王』

全員が息を呑んだ。

シエルがぽかんと口を開ける。

「しょ、初代!?」

ネフィラですら、
警戒するように目を細めている。

ルクスはゆっくり、
エリアスを見つめた。

その瞳は、
まるで過去を見るみたいだった。

『……なるほど』

小さな笑み。

『また、
お前なのか』

エリアスの瞳が揺れる。

意味が分からない。

なのに、
胸の奥がざわついた。

するとルクスは、
そっとエルシアへ手を伸ばす。

『来てはいけなかった』

悲しそうな声。

『お前まで、
この運命へ巻き込まれる必要はなかった』

「……運命?」

エルシアが呟く。

その瞬間。

白い花が、
ふわりと揺れた。

すると大量の記憶が、
一気に流れ込んでくる。

月夜。

白い庭園。

泣いている少女。

そして──

彼女を抱き締める、
白銀の青年。

『愛している』

苦しいほど優しい声。

『だから、
終わらせよう』

エルシアの瞳から、
涙が零れた。

「……ぁ」

胸が痛い。

切ない。

まるで、
自分の記憶みたいに。

するとルクスは、
静かに言った。

『花姫は世界を滅ぼした』

空気が凍る。

『だから私は、
彼女を封じた』

月光が、
鎖を照らす。

『……愛したまま』

エルシアの呼吸が止まる。

花姫も、
ルクスも。

互いを愛していた。

なのに最後は、
封印という形で終わった。

「……そんなの」

エルシアの声が震える。

悲しすぎる。

するとルクスは、
静かに微笑んだ。

『だから願った』

彼の視線が、
エリアスへ向く。

『次こそ、
彼女を救えるように』

その瞬間。

エリアスの身体が、
淡く月光を帯びた。

神殿が大きく揺れる。

ネフィラが顔を変える。

「まずい……!」

アシュレイも険しい顔になる。

「封印核が反応してる!」

次の瞬間。

──バキンッ!!

巨大な鎖に、
ヒビが入った。