続 追想と翼望(ついそうとよくぼう)君がいるから僕の時間が動き出す

旭を昨晩、送って行った時は、遅くてあまり家の中を見ていなかった。改めて見てみると書斎だけでなく、開いたままの寝室も広いと思った。

書斎に行って好きな本を手にした。すると旭が寝室に入って行った。

本を3冊ほど持って裏面のあらすじを読んでいたが、藍は旭のことが気になって仕方ない。

閉まっている寝室の前まで行って、扉に耳をあてて中の様子を伺った。何も聞こえなかった。

もう少し体を寄せて耳を澄ませてみたら本を落としてしまう。大きな音をさせたので、慌てて本を拾った。

すると、扉がゆっくり開くと、旭は呆れた顔をして立っていた。

「佐藤先生、すいません。うるさいですよね」
「眠れない」 
「あの、この本お借りしたいと思って」
「どうぞ」

閉まりかけた扉を手で押さえて藍は話しかけた。

「あの、先生お腹が空いていませんか?良かったら朝食作りましょうか?」
「どうして?」
「朝ご飯を食べないと体に悪いなと思って」
「寝ない方が体に悪いと思うけど」
「ああ、そうです。そうですよね。おやすみなさい」
「おやすみ」

扉が閉まったと思ったら、また開いて旭が出てきた。機嫌が悪そうな雰囲気が滲み出ていた。

怒らせて連載をしてもらえないと困ると悪い想像しか出来ない藍だった。そのせいで旭を見て愛想笑いを無意識にしていた。

その笑顔を見ても旭は無愛想でいる。その様子は、どう考えても朝が弱い。それなのに早朝から押しかけてきたことは、状況が悪いに決まっている。どうしたものかと藍は考えた。