続 追想と翼望(ついそうとよくぼう)

旭の家に向かうため電車を使い、その後は駅から徒歩で移動した。到着した家の前は明るい日中に改めて建物を概観し観察してみる。

古民家だと旭は言うが、駅から近いので相当、価値のある物件だと思えた。

「おはようございます」

インターホンを鳴らしたが、応答がないので戸を叩いた。そして、もう一度呼びかけてみた。

「佐藤先生!おはようございます」

ドンドンと叩いても返事がない。更に強い力で叩こうとした途端、スライドした戸が音をたてて開いた。

藍はバランスを崩して、戸の内側に立っていた旭の胸の中に飛び込んだ。

「先生」

藍は旭を見上げる形で抱き合っていた。

「何、嫌がらせ?」
「え?わぁ、先生誤解です」

藍は飛び上がって離れた。旭が高身長でつい、しがみついてしまったのだ。

「先生、そんなつもりはないんです」
「そんなつもりって、どんなつもり?」
「どんなって。いや、その、どんなかな?」
「用がないなら帰ってくれる。眠いんで」
「睡眠中でしたか。すいません。あ、そうそう本。本見てもいいって言ってたので、お言葉に甘えて来ました」
「早朝に•••。まあ、いいよ。静かにね。どうぞ」

旭はすんなりと家に上がらせてくれた。