カメラのシャッター音、足音、歓声、拍手、様々な音が混じり合い、物語の始まりは祝福された。
先程までキョロキョロとしていたランナーは名前を呼ばれたような気がして、沿道を咄嗟に見た。そこにはあの女性がいた。これは偶然か必然か運命か奇跡か。
2人とも驚いたように目を見開いた後、嬉しそうに微笑みあった。そのような一瞬があったためにそのランナーは遅れをとってしまったが、何かが吹っ切れたように見える。すぐに集団に追いつくと、先頭に立った。何かが天から降りてきたような走りをしている。
女性と微笑みあったことでそのランナーの脳裏に蘇ったのはいつか交わした会話だった。
ーー俺、陸上やめるけん。ごめんな。
ーー嘘つき。箱根走るって言ったやん
ーーもう限界やけんさ
ーー走ってよ!
ーーじゃあ、約束してくんない?
“約束守ってくれてありがとう。これからもずっと見とってよ、見守っとってよ”
走り終えたら、1番にそう、伝えに行こう。

