いつか交わした約束

1月2日午前7時55分大手町読売新聞社前。

色とりどりのユニホームと21人にかかった21本の襷はあと5分で鳴る号砲を、2日間にわたる長い旅の始まりを、待っていた。

新春の風は肌寒さと優しさを含んでおり、今から始まる物語を応援してきるようだ。

それぞれの思いを抱えてスタートラインに立つのは選手だけでなく、スタート地点でごった返す観客も同じだ。ただの観戦者、関係者、その他、どういう立場にしても、何らかの思いがあって今日この場に来ているのだ。

その女性はスタートラインに立った1人のランナーを見つけると、嬉しそうに笑った。

一方でランナーはスタート前にも関わらず、あたりをきょろきょろと見渡していた。ある女性がそのランナーを見つけたようにランナーもまた女性を探しているのだろうか。しかしそれでは人が多すぎて見つけることはほぼ不可能だろう。

「10秒前」

そのような言葉がかかって初めてランナーは集中した表情になり、右手で左手首にはまった時計に触れた。

うっすらと微笑むとアスファルトに視線を落とす。何がそんなに嬉しくて楽しくて笑ったのだろうか。選手にとっては緊張ときつさが襲ってくるだろうに。

ーーパン、と乾いた音が響き渡った。