王妃は『まったく』と、呆れるように、息を吐きます。
「近々、あなたの成人を祝う舞踏会を催します。ジーク、そこで必ず、この国に相応しい妃を選びなさい」
ジークは、自身の身の方向が、周りに固められ、勧められていることに、慌てました。
戸惑いながらも、少しばかりの抵抗を見せていました。
「……ですが母上」
それでも王妃は、背筋を伸ばし『キッパリ』と、言い放ちます。
「いいですね。これは決まりです」
拒絶を許さぬその声に、ジークは再び目蓋を伏せるしかありませんでした。
すると王妃は、ふと息子の乱れた装束に目を留め、忌々しげに付け加えた。
「あら……上着のボタンが一つ、失われているではありませんか。王家の者として、なんとも見苦しい」
王妃はすぐさま傍らの従者へ、氷のような声を飛ばします。
「ジークの上着を仕立て直すよう、針子たちに伝えなさい。二度とこのような粗相がないように」
ジークは、ボタンが失われた胸元にそっと指を這わせました。
そこにあるはずの重みが消えた跡に、言いようのない寂しさが募ります。
望まぬ結婚への重圧を逃れようと森へ向かったのに、結局は気分転換どころか、大切なボタンまで失くしてしまったからです。
「近々、あなたの成人を祝う舞踏会を催します。ジーク、そこで必ず、この国に相応しい妃を選びなさい」
ジークは、自身の身の方向が、周りに固められ、勧められていることに、慌てました。
戸惑いながらも、少しばかりの抵抗を見せていました。
「……ですが母上」
それでも王妃は、背筋を伸ばし『キッパリ』と、言い放ちます。
「いいですね。これは決まりです」
拒絶を許さぬその声に、ジークは再び目蓋を伏せるしかありませんでした。
すると王妃は、ふと息子の乱れた装束に目を留め、忌々しげに付け加えた。
「あら……上着のボタンが一つ、失われているではありませんか。王家の者として、なんとも見苦しい」
王妃はすぐさま傍らの従者へ、氷のような声を飛ばします。
「ジークの上着を仕立て直すよう、針子たちに伝えなさい。二度とこのような粗相がないように」
ジークは、ボタンが失われた胸元にそっと指を這わせました。
そこにあるはずの重みが消えた跡に、言いようのない寂しさが募ります。
望まぬ結婚への重圧を逃れようと森へ向かったのに、結局は気分転換どころか、大切なボタンまで失くしてしまったからです。



