黒鳥のオディール

「フッハッハッハ。運命は……もはや、誰にも変えられぬのだよ、ジーク」

 ジークはベンノに一言残すと、ロートバルトの元へ走り寄ります。

「彼女とオオカミを頼む」

「えっ! ちょっと待てよ」

 ジークが剣を交える中、ベンノはオニキスに触れるのを怖がりながらも、かつぎその場を離れました。

 猛烈な攻撃に苦戦するジークに対し、力で押すロートバルト。

 ジークはそんな中、静まり返った湖面に立つオデット。そして、水面に浮かび静かに見つめる数多の白鳥たちの、悲しげな視線をその身に受けていました。

(私は……私は誰を救えばいい……!?)

 ジークの心に迷いが生じた、その一瞬。彼は不覚にも足を滑らせ、その場に倒れ込んでしまいます。

 ロートバルトは勝利を確信した不気味な微笑を浮かべ、とどめを刺さんと剣を大きく振りかぶりました。

 転倒し、死の足音を背後で聞いたジーク。

 彼が死を悟ったその瞬間、オデットや誰でもなく、闇の中に佇むオディールへと視線を投げ向けていました。