黒鳥のオディール

 ジークは間一髪。その声に救われると、魔王の悪意ある剣は、空を切ります。

 ロートバルトは、自らの一撃が逸れたというのに、不気味な微笑みを浮かべました。

「これはどういうことだね、オディール? まさか私を裏切るとは」

 ジーク達も視線を声の主へと向けると、そこには悲しみと恐怖に震えるオディールの姿がありました。

 ロートバルトも、オディールに視線を向けると、その隙を突いてオニキスが襲いかかります。

 腕に食らいついて離れない彼を、ロートバルトは難なくそれを払い落とし、残酷にも、手に持つ剣で、オニキスの背中を突き刺しました。

 悲鳴をあげ、オニキスに近づくオディール。
 その光景を楽しむようにロートバルトは見下ろしています。

 戦慄が支配する湖畔。雲間から顔を出した月が、冷酷なまでに冴えわたる光を投げかけ出していました。

 月の光は、悲しく見つめる蒼い瞳の白鳥の姿を、オデット姫へと変えていきます。
 ベンノはその状況が飲み込めず、呆然と呟きます。

「おい。白鳥のお姫様って、彼女のことかい? じゃあ、舞踏会に現れたもう一人の彼女は」

 ロートバルトは驚くベンノの声と、ジーク達の危機迫る表情に、高笑いを見せました。