黒鳥のオディール

 そして、悪意に満ちた笑い声が、会場の静寂を切り裂き轟いたのです。

「フハハハハハハッ。よくやったぞオディール。これでオデットは永遠に私のものだ」

 ジークは声のする方を見渡しましたが、声の主はどこにも見当たりません。
 彼は沸き上がる怒りを天へ向かって叫びました。

「お前か、森に住む魔王というやつは」

 兵士たちは剣を抜き、近くの者がジークに剣を手渡します。
 彼は迷わずそれを受け取ると、鋭い音を立てて鞘から抜き構えました。

 ベンノだけは、銀のお盆を頭に添えたまま、火の消えたキャンドル台を握りしめ、這うようにしてテーブルの下へ逃げ込みました。

「これはこれは、ジークフリート。オデット姫だと思い、お前が誓いを立てたのは私の最愛の娘。オディールだ」

「えっ! ……オディール……」

「ハッハッハッ。最も間違えるにも無理はない。なにしろオディールは、オデットの影より生み出されし産物。言わばよく似た、人形みたいな者だからな」

 不意にオディール目が合うと、彼女は悔やむ表情をし、見られることが辛そうに顔を背けていました。

 そして、大きな落雷が落ち、世界の全体が真っ白に染まると、会場にはオディールの姿はありませんでした。