黒鳥のオディール

 ーー舞踏会の開かれる当日。

 フリート家には数多くの賓客で賑わっていました。

 大広間は数多くの蝋燭が灯され、煌びやかな装飾と豪華な食事を映し出しています。

 年頃の娘たちは、凛々しく立つジークの姿に酔いしれ、それを見たジークの母は、羽のあしらった扇子を優雅に使いながら、満足げに息子を見つめていました。

 ジークの側では、友人のベンノが背伸びをしながら、並み居る客たちを覗き込むように見渡しています。

「なあ、ジーク。君の姫はまだ来ていないのかい」

 ジークもベンノの言葉に、人をかき分けるように視線を巡らせました。

「ああっ……まだのようだ、来ればすぐに君にもわかると思うのだが」

 その言葉の後、会場が割れんばかりにざわめきと、視線で溢れました。

 人が引き潮のように左右に割れ、その間を漆黒のドレスを纏った女性が歩き進みます。
 共に大きなオオカミを連れ、その奇妙な組み合わせと、妖艶な容姿に皆息を呑みます。

 ジークは目の前に立ったオディールを見つめ、当初の姿と違うことと共に、その美しさに言葉を失います。

 本来の金髪と白い肌が、黒髪と褐色の肌に戸惑いを見せましたが、澄んだ蒼い瞳に吸い寄せられていきます。