「もし本当に薪原さんと付き合うことになったら、來生くんはどうするの?」
紗凪の問いかけに、俺はこの前、薪原に会った時点でその答えは出ている。
「そのうち、ここから出て行く」
はっきりと言うと、本当に出て行っちゃうの?と言わんばかりの顔で俺を見る。
「だけど、その前に本当にいなくなるかもな」
冗談混じりに言ったものの、彼女は真に受けたのか今にも泣き出しそうな顔で訴えた。
「そんなのやだよ。いなくならないで! 私、薪原さんのこと断るからずっと側にいてよ」
「それじゃあ、いつまで経っても紗凪が前に進めないだろ!」
まるで子供のように駄々をこねる紗凪にいつになく強い口調で叱った。
「それに、おまえは今年で25歳になる。いい加減、これからの人生のこと考えろよ」
「なんで來生くんに説教されなきゃいけないの? 私はただ來生くんとまだ一緒にいたいのに」
潤んだ瞳を向けられて一瞬心が揺れたが、紗凪のこれからのことを考えると意志を曲げるわけにはいかない。
俺のせいでお前の人生を壊したくない。
紗凪から離れるから、お前も俺から離れるべきだ。
なぜなら、俺にはないこれからの人生が彼女にはあるからだ。
「紗凪。いい加減、現実見ろ。そして、受け入れろよ」
一拍置いて最も大事なことを言った。
「俺はもう死んでるんだよ。2年前に」
紗凪に言い聞かせるようにゆっくりと「俺はもう存在しない、この世に生きていない」と伝えたものの、紗凪は「違う」と首を横に振って否定した。
「來生くんはここにいる。生きてるじゃん!」
「でも、それは亡霊としてだろ」
「……」
今度は否定しなかった。
ぐっと唇を噛み締め、視線を下げている。
紗凪は俺が亡霊だと認識はしている。
ただ、俺が死んだという事実を受け入れられずにいる。
あまりにも突然な死だったからだ。



