「薪原裕之。今年で27歳。塾講師。アニメが好き。特にNew Future。マッチングアプリのプロフィールに書いてあったことはどれも本当だ」
職業柄、刑事が犯人の特徴や被害者との関係性などを同僚に情報共有するみたいに、あいつの情報を淡々と伝えた。
「薪原は詐欺師ではないし、逮捕歴もなし。女の影もないし、結婚歴もなし。この前、給料日だったらしくこっそり通帳見たけど収入面も安定している」
「なんでそこまで知っているの?」
「この1週間、あいつのこと尾行して決定的に調べ上げたからな」
「尾行……」
「そんな目で見るなよ。俺はただお前が変な男に引っかかってないか見極めるためだ。というか、警察官だった時、事件とかあると容疑者の尾行してたし」
紗凪はなにも言わずに俯いていた。
薪原の詳細を知った上で、告白の返事をどうするか迷っているのだろう。
こんな時、『紗凪が好きだ。他の男のところに行くな』とずっと胸の中にある気持ちを伝えたいけれど、そんなこと言える立場ではない。
だから、紗凪の背中を押すしかない。
「あいつ、本気で紗凪との交際を考えてたぞ。告白したあとだから、飲みに誘ったら迷惑かなとかずっと悩んでいたくらいだ」
「そんなに?」
紗凪はスマホを手に取るなり、先ほど届いたメッセージをまじまじと見た。
薪原は1週間悩んだ末に勇気を出して誘ったのだろう。
「紗凪はあいつに対して、怖い、気持ち悪いなど感じたか?」
「ううん。薪原さんは、とても優しい人だなって思った。知り合いにアニオタの人いないから、薪原さんとNew Futureについて語り合えたのが凄く嬉しかった」
「じゃあ、お前の中で答えはすでにでているんじゃないのか?」
紗凪がなにも言い返さないから図星なのかも知れない。
それなのに、なにをそんなに悩んでいるのか俺には理解ができないが長い沈黙のあと静かに彼女が発した言葉で俺は知ることになる。



