今から5年前。
紗凪が美容専門学校に通っていた頃、満員電車に乗っていた時に知らない男性に痴漢されて以降、男性恐怖症になった。
元々人見知りで内気な彼女は、周りに助けを呼ぶことができなかったうえに犯人の顔を見ていないため逮捕には至っていない。
そのため、またいつか触られるかもという不安が膨れあがり、知らない男性が近くにいるだけでビクビク怯えて、買い物もできるだけ控えるようになった。
社会人になってからは、少しはマシになったみたいだがそれでも男性に対して怖いと感じることがあるらしい。
従兄弟の俺のことは大丈夫みたいで、2年前、とある事情により住む家がなくなった俺を部屋に招いてくれてずっと紗凪の側にいた。
「だって、あの頃の來生くん、寂しそうな目をしてたから」
「別に俺は寂しかったんじゃない。紗凪のこと心配してただけ。男性恐怖症な上に1人暮らしだし。というか、簡単に男を家に入れるなよ。俺じゃなかったら、どうなっていたか知らないぞ」
「どうって?」
聞き返した彼女に、俺は深いため息をついて答えた。
「男に襲い掛かられて、もっと男が怖くなってたかもしれないってことだよ」



