さよなら、未来を生きる君へ


「ねぇ、來生くんは薪原(まきはら)さんのことどう思う?」

薪原裕之(ひろゆき)。

そいつこそが、紗凪にメッセージを送った人だ。

「なんで俺に聞くんだよ。お前の気持ちが1番重要なんじゃないのか?」

「そうだけど……。でも、來生くんの意見が聞きたくて」

今年25歳になる紗凪は、美容専門学校卒業後は1人暮らしをしながら化粧品会社で働いている。

同僚からマッチングアプリを勧められて、紗凪は乗り気ではなかったが断ることができずにアプリを入れてしまった。

その同僚はマッチングアプリで仲良くなった男性と、来年結婚予定らしい。

男性に苦手意識がある紗凪はそのうちアプリを削除しようと考えていたが、アニメが好きという共通する男性からメッセージが入り、やり取りを交わすようになった。

中でも、今、話題のNew Future(ニューフューチャー)というアニメがお互い好きらしい。

俺は詳しくは知らないが、主人公の女子大生が歌手になる夢を追いかけて、小さなライブハウスや路上ライブなど長い下積み時代を経験し、念願だった夢を叶えるという物語だ。

なかでも、周りから夢を反対されたシーンで主人公が『私は歌手になりたいの。その夢を誰にも壊されたくない』とはっきりと言った上で『私は私の力で自分の未来を切り開いていく』という名台詞が紗凪の心にグッとくるらしい。

それで、アニメについて薪原とメッセージを交わしたり電話なんかで話が盛り上がっているのを度々見かける。

お互い都内在中なこともあり、薪原から誘われて初めて会う約束をした。

その時、紗凪からとあることを頼まれた。

マッチングアプリで仲良くなった男性と初めて会うからなにかあった時には助けて欲しいと。