芽依子を乗せた救急車が、総合病院に到着した。
ストレッチャーで運び終えたあと、救急隊員が担当の医師へ引き継いでいく。
「はる君っ!」
はる君と呼ばれた男性のもとへ、芽依子の母――芙美が駆け寄った。
「連絡ありがとう!ごめんねっ、芽依子のこと、ありがとねっ……」
「芙美ちゃんに連絡ついたから、良かったわ」
「まさか……はる君が運んでくれたなんてね。さすが救命士さん!」
「めいは、大事ないと思う。ひとまずは安心してな」
芙美は、ほっと胸を撫で下ろした。
娘の無事を顔なじみの、しかも救急隊員から聞いたことで、ようやく震える指先を組んだ。
他の隊員たちにも挨拶し、芽依子の所へ向かう。
その背中を見送った"はる君"こと――池田遥希もまた、同じように安堵していた。
(ほんま、大事にならんくて良かったけど……)
「あのクソ野郎……次、会ったら覚えとけよ」
遥希の端正な顔が、見たこともないほど冷酷に歪む。
いつもの穏やかな"はる兄"はどこにもいなかった。
隣にいた後輩隊員が、その殺気立ったオーラに思わず背筋を正す。
「もしかして、池田士長の特別な女っすか?」
「そうだよ。俺の、かわいい特別な幼馴染みだよ。……ほら、引き上げるぞ」
そう笑顔で言いながら、遥希の頭の中は、再会の喜びと江崎の存在がせめぎあっていた。
揺れる車内の中で、芽依子がこぼしたSOS。
『……はる兄、こわい、たすけて……』
どんな意味で言ったか関係ない。
芽依子が泣いて、自分に助けを求めている。
遥希が動くには十分すぎる理由だ。
怒り心頭だった江崎も、居酒屋の店員や周りの見物客のざわめきで、少しずつ酔いが醒めていった。
遥希たち救急隊員を見るや否や、「自分は悪くない」、「少し口論になった」、「彼女のことが心配」と矢継ぎ早に話し手のひらを返していた。
その後、江崎がどうしたか、知ったことではない。
――あの男からめいを奪い返す。
「めい、逃がさへんよ、今度こそ俺が守る」
ただ、それだけだった。
ストレッチャーで運び終えたあと、救急隊員が担当の医師へ引き継いでいく。
「はる君っ!」
はる君と呼ばれた男性のもとへ、芽依子の母――芙美が駆け寄った。
「連絡ありがとう!ごめんねっ、芽依子のこと、ありがとねっ……」
「芙美ちゃんに連絡ついたから、良かったわ」
「まさか……はる君が運んでくれたなんてね。さすが救命士さん!」
「めいは、大事ないと思う。ひとまずは安心してな」
芙美は、ほっと胸を撫で下ろした。
娘の無事を顔なじみの、しかも救急隊員から聞いたことで、ようやく震える指先を組んだ。
他の隊員たちにも挨拶し、芽依子の所へ向かう。
その背中を見送った"はる君"こと――池田遥希もまた、同じように安堵していた。
(ほんま、大事にならんくて良かったけど……)
「あのクソ野郎……次、会ったら覚えとけよ」
遥希の端正な顔が、見たこともないほど冷酷に歪む。
いつもの穏やかな"はる兄"はどこにもいなかった。
隣にいた後輩隊員が、その殺気立ったオーラに思わず背筋を正す。
「もしかして、池田士長の特別な女っすか?」
「そうだよ。俺の、かわいい特別な幼馴染みだよ。……ほら、引き上げるぞ」
そう笑顔で言いながら、遥希の頭の中は、再会の喜びと江崎の存在がせめぎあっていた。
揺れる車内の中で、芽依子がこぼしたSOS。
『……はる兄、こわい、たすけて……』
どんな意味で言ったか関係ない。
芽依子が泣いて、自分に助けを求めている。
遥希が動くには十分すぎる理由だ。
怒り心頭だった江崎も、居酒屋の店員や周りの見物客のざわめきで、少しずつ酔いが醒めていった。
遥希たち救急隊員を見るや否や、「自分は悪くない」、「少し口論になった」、「彼女のことが心配」と矢継ぎ早に話し手のひらを返していた。
その後、江崎がどうしたか、知ったことではない。
――あの男からめいを奪い返す。
「めい、逃がさへんよ、今度こそ俺が守る」
ただ、それだけだった。



