奇跡。

重い足取りで家路へ着く。


家に帰っても、無駄だよ。


暴力ばっか振ってくる。


この前なんて、ガラスを投げてきた。


容赦なく私の肌に刺さった。


血が流れた。


なんなの……。


そんなに私の事が嫌いなら、もういっそ殺してよ……。


でも、怖い。怖いんだ。


殺されるのは、理不尽。


あんたみたいな最低な親に、殺されてほしくない。


いや、もうむしろ親ですらないのかな。


他人だよ。他人。


でもそれで終わらせることはできない。


私たちは、他人。


それでオールオッケーなわけがない。


必ず、成し遂げなきゃ。


残酷で残忍な、復讐を。


心の中で闘志を燃やしても、実行なんてできないことはとうにわかっている。


そもそも私に復讐計画を考えられる程の頭脳は全くない。


だから、どうしようもない。


世界にはきっと、そんな人がいると思う。


全員、辛いんだよ。


全員、辛い思いをしてる。


だから我慢して、なんてできるわけがない。


全員、限界なんだから。


そう感じた瞬間、私は全てのことがどうでも良くなった。


死ぬのはもちろん怖い。


でも、時には。


────死んでもいいんじゃないかって。


そう思う。


転生して、アニメの世界で生きて。


幸せな生活を送りたい。


それほどの満足をもらえるなら。


「……死んで、いいかも。」


思考より先に、体が動いていた。


走って、走って、走って。


私は、もうどこにでも行ける。


怖くなんてない。


死んでもいい。


もし。


同じ経験をしてきた人と出会ったら。


同じ事情の人と出会ったら。


今、ここで。


私の人生は、変わっていたかもしれない。


そんな妄想。あるかもしれない。


だから私は、今走ってる。


誘拐されても構わない。


夕方の公園。


見慣れている。


家から少し近い。


お母さんが包丁を持って私を探しに行くかもしれない。


そこは逃げなきゃ。


私は息を整えて、顔を上げた。


前髪を掻き上げる。


「親に殺されたくない!」


私は今まで溜め込んできた思いを、


「私は、生きてるんだから!」


今ここで、ぶちまける。