奇跡。

薄暗い通り道。


電柱しか光ってない。


微かに周りが見えるだけ。


怖いとは思わない。


ただただ、不安だった。


8人分のジュースを買おうとして、財布を出す。


渡辺くんはすっぱいのが好きだからレモンスカッシュかな。


佐藤さんは苦いのが好きだからコーヒーかな。


美琴ちゃんは────。


最後の8人目の彼女の分を買おうとして、手が止まった。


お金は、ある。


でも、彼女は。


気分によって飲みたいものが変わる。


さっきの美琴ちゃんの表情、どんな感じだったっけ?


笑顔をつくるのに必死で、顔をよく見ていなかった。


7つの缶を次々と落としてしまう。


拾わなきゃ。拾わなきゃ。


傷がついちゃう。汚いって言われちゃう。


『えーこれ汚ったな。新しいの買い直してきて。』


『おっつー。もしかして落とした?笑 』


誰もいいって、大丈夫だって言ってくれないから。


肯定してくれないから。


「どうしよう、どうしようどうしようどうしよう。」


傷がついてる。


何を買えばいいのか分からない。


早く行かないと遅いって言われる。


妹の世話をしないといけない。


お母さんに手伝えって言われる。


怒られる。怒られる。怒られる。


どうしよう。


誰か、助けて。


涙で視界が滲む。


ストレス発散……できるのは。


思いついた。


莉音。


莉音だ。


加賀美 莉音。


クラス最底辺の地位にいる。


" いじめられっ子 "


「ふふっ。ふふふふっ。」


やった。


あの子をいじめたら。


このプレッシャーも。


この精神も。


全部無くなる。


自分が上だって。


優越感に浸れられたら。


私は。


生きていける。