好きになった人は、みんなのアイドルで 2

(……変じゃないよね)
電車の窓に映る自分を確認して前髪を直す。

今日は、悠太郎くんと付き合って初めてのデート。
緊張して朝ごはんの味も分からなかった。

駅に着くと、悠太郎くんがいる。
(……かっこいい)

スマホを見ていた顔を上げて、こっちを見る。
ふわっと笑って手を振るこの人が私の彼氏だなんて、未だに信じられない。

「紬ちゃん」
悠太郎くんが駆け寄ってくる。

「ごめん、お待たせ」
「待ってないよ、今来た」
……嘘、絶対待ってた。

「水族館行くのとか何年ぶりだろ」
「ほんと?私は東京来てからいくつか行った」
「そうなんだ!水族館好きなんだね、紬ちゃんの好きなとこ一緒に行けて嬉しい」
本当に嬉しそうな顔をする悠太郎くんが愛おしい。
え、愛おしいってこういう気持ちなんだ。

水族館に着くと思ったより大きい。
「ね、イルカショー15時からあるよ」
パンフレットを見ながら悠太郎くんに言うと
「じゃあ計画的に回らないと」
と真剣に返してくるから笑ってしまう。

「この魚かわいい」「こっちに変なのいるよ」
順番に水槽を見ていると、あっという間に時間が経つ。

「時間だよ、イルカショー行こ」
ちゃんと覚えててくれて嬉しい。

水がかかると書いてある場所は避けたのに、水しぶきが飛んでくる。
「大丈夫?」 悠太郎くんがハンカチを取り出して拭いてくれる。
自分だって濡れてるじゃん、と拭いてあげる。
なんだかおかしくて二人で笑う。

「体冷えたね、温かいもの飲もうか」
カフェテリアで一休みする。
体が温まってきたのでコートの前を開けると
「え、ちょっと待って」
悠太郎くんがコートを脱ぐ。

「ねえ、服おそろいなんだけど」

悠太郎くんが、私が着ているのとそっくりのグレーのニットを着ていた。

「……え?」
「打ち合わせしてないのに被ることってある?」
「ねえ、真似しないで」
「真似してないよ、そっちが真似したんでしょ」
「私、真似してないもん」

「じゃあ運命だ」

サラッと言われて、何も言えなくなる。

初めてのデートは、ペアルックになった。