好きになった人は、みんなのアイドルで 2

ーー悠太郎サイド

大学終わりに紬ちゃんと待ち合わせてご飯に行く。
アイドルの夢のこと、本気なんだって、伝えるんだ。
紬ちゃんのこと、これから苦しめてしまうかもしれないけど、
今こんなこと言うのは重いかもしれないけど、ちゃんと聞いてほしいって。

「お待たせ」
息を切らして紬ちゃんが来る。
「ごめん、授業、長引いて……」

「走ってこなくても良かったのに。大丈夫、俺待ってるよ」
「ううん、早く会いたかったの」
……なんだそれ。それは、ずるい。

店に着いて注文を済ませる。
紬ちゃんは、なんとなく元気が無い。

「どうかした?今日、元気無い?」
「ううん、そんなことない。全然元気。」

注文した料理が運ばれてくると、紬ちゃんがポツリと言う。
「……話って、なに?」

ふーっと小さく息をついて話し出す。
「笑わないで聞いてほしいんだけど」
かっこ悪い枕詞がついてしまう。
「俺、本気でアイドルなりたくて、」

「うん」と紬ちゃんが真剣な表情で頷く。

「俺、もっと頑張りたいんだ」
「デビュー、したい」
「チャンスがあったら、いつでも全部掴みに行くつもり」

「だから……会えない日とか増えちゃうかもしれないけど、ちょっと練習の日増やしたくて、」
「あと、これはもしかしたらずっと先のことかもしれないけど、デビューすることになったら紬ちゃんのことも、苦しめちゃうかもしれなくて、」
「それでも今の俺は、紬ちゃんとずっといたくて、」
「……こんな俺だけど、いい?好きでいてくれる?」

一気に言い切って紬ちゃんの顔を見ると、紬ちゃんは泣いていた。

「え、ごめん、待って、なんで泣いてるの」
慌ててハンカチとティッシュを出すと
紬ちゃんはグイッと手で涙を拭って

「大好きだよ。ずっとそばにいる。」
真っ直ぐ目を見て言ってくれた。

「うん、ありがとう。でもごめん、泣かせる気は無かった」
おろおろしてしまう俺。
「だって、別れ話だと思ってぇ……」
また泣き出す紬ちゃん。

……え。別れ話?
「なんで、ごめん、え?真面目な話って言ったから?」
「え、どうしようごめん、俺の言い方が悪かった」

「別れてって言われても、笑顔で分かったって言うつもりで、でも、嫌だったから……」
「別れたくなかったから……」
ぽろぽろ涙を流す紬ちゃん。

傷付けたくない。もう、泣かせたくない。
「ごめん、大好きだよ、紬ちゃん。ずっと一緒にいてください」

ついプロポーズみたいになってしまった。
……でも、それくらい本気だった。
紬ちゃんのことも、夢のことも。
どっちも、ちゃんと選びたかった。

紬ちゃんは、泣きながら「うん」って頷いてくれた。