「あ、俺トイレ行ってくる」
緋由がスマホをポケットに突っ込みながら立ち上がると、椅子の足と床が擦れて低い音を奏でた。
「いってらー」
右手に持ったコーラを揺らして、角を曲がる緋由を見送ってポテトに手を伸ばす。
「なあ」
その瞬間、悠の声がやけに近くで聞こえてきた。
「…なに?」
ポテトまであと数cmのところで指を止めたまま、恐る恐る悠の方を振り向く。
「おりみやさんと付き合ってるん?」
世間話のようなテンションで発された悠の一言に、僕は思わずフリーズしてしまう。
「あ、まだ好きな人止まり?早く告らんと…」
「違うって」
僕が黙り込んだのをいいことに勘違いの追撃を食らってしまい、食い気味に訂正する。
「校外学習の時、好きなんやろとか聞いたけど違かった?」
話が全く違う方向に飛んでいきそうで、僕は慌てて「付き合ってる!」と声を張り上げた。



