「ねえ!お題なんなの?」
ゴール前、最後の直線で織宮さんが息を弾ませながら僕にそう聞いてくる。
「ちょっと、待って」
織宮さんにお題を教えてあげたいのは山々だが、後ろから他クラスの人が来ているからそれどころじゃない。
立ち止まったら追いつかれてしまうという焦燥感だけで、僕は織宮さんの手を引きながら白いテープが張られたゴールへ直走る。
白いテープが視界からフェードアウトし、僕は何も考えずに息を整えることだけに集中する。
「笠原、くん」
こめかみのあたりを指でなでつけながら、織宮さんが僕の名前を呼ぶ。
「お題、なんなの?」
まだしゃべれるほど息が整っていないので、僕は無言で手に持っていた『彼女・好きな人』の紙を織宮さんに見せた。
「…ふふっ」
息を多く含んだ柔らかな織宮さんの笑い声に、顔を上げる。
「お役に立てて、光栄ですっ」
おどけたように敬礼する織宮さんに思わず見惚れていると、ホイッスルの甲高い音が体育館に響いた。
『障害物競走第一レース終了です!第一レースの出場者は各クラスのテントに戻ってください!』
きんとハウリングしたアナウンスに我に返る。
僕は織宮さんの手をそっと離して、そのまま彼女の隣を歩いてテントに戻る。



