Something Blue


「D組行くぞー!」

『おー‼︎』

体育祭当日。高校から少し離れたところにある市立体育館に、僕たち1年D組の掛け声が響き渡った。

「楽しみだね」

円陣がばらけ始め、僕の右肩に置いていた右手をそっと外して柔らかな笑みを浮かべる織宮さんに、不意に心臓が大きく跳ねる。

「う、うん…」

多分僕は、今とんでもなくニヤついたキモい顔をしているだろう。

「おーい笠原ー」「結羽ちゃーん!」

同時に誰かから呼ばれた僕たちは、こっそり目を合わせて口角を上げる。

「また後でね」

いつもと違う、ふたつに分けた黒髪を耳の辺りでお団子にした織宮さんが踵(きびす)を返して走り去っていく。

青色のクラスTシャツの後ろ姿が見えなくなってからたっぷり10秒、僕は織宮さんに背を向けた。

そのまま、体育館の壁に背中を預けて僕を無気力に手招きしている悠の方に向かう。

「水筒忘れた。水買うし一緒行こ」

先ほどのときめきを忘れそうになってしまう悠の一言に、思わず吹き出してしまう。

「水筒忘れたはやばいって」

「まあまあ」

返事をする間もなく背中を押され、僕は悠と一緒に体育館を出た。